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【上原浩治のメジャーリーグ漂流記】オフも自己管理、自己責任
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3度目となるレッドソックスの春季キャンプでブルペン入りした上原浩治=2015年、米フロリダ州フォートマイヤーズ(共同) 米国フロリダ州のフォートマイヤーズ。ここで始動するレッドソックスの春季キャンプも、今年で3度目となる。移籍の激しいメジャーでは、同じチームに3年も在籍していると、すっかりなじめている気がする。
キャンプの期間中は、球団がホテルを用意してくれるが、私の場合はフロリダに購入した自宅で生活する。球場までは車を使っての“通勤”だ。
移動はけっこう遠い。片道だけで40分ほどかかる。4日に1度のガソリン給油もルーチンの一つになる。
朝は早起きで、夜は早寝。午前6時に起きて、午後10時前にはベッドに横になる。この時期は、早寝早起きの毎日で、健康的な生活を送っている。キャンプ期間中には休みがほとんどない。日本のように“4勤1休”などとは違い、約40日間で1度あるかないか。体にはけっこうこたえる。
日本のキャンプと違うのは、全体での練習は午前中でほぼ終了する点だ。それ以外の時間を使った調整は各自に任されているので、拘束時間はそれほどない。
ただ、練習中の切り替えはものすごく早い。休憩時間はほとんどなく、汗をかいたときの着替えもすぐに済ませないと一緒にメニューをこなしていくグループから取り残される。ブルペンに入って、投球練習を行った後の肩や肘のアイシングも練習が終わってからだ。
すべてが終われば自由行動だ。私は、帰宅してから右肘などの電気治療や、近くのプールで読書にも時間を費やす。オリオールズに在籍していたときは、宿泊先の近くにゴルフ場があったので、たまにリフレッシュにラウンドを楽しんだこともある。
自由な時間がたくさんあるというのは、自己管理を怠ることができないということでもある。
キャンプからオープン戦を迎え、シーズンが開幕しても、選手はキャンプからのトレーニングを継続している。メニューが個々で違ったり、自分のやりたいことで汗を流す。しっかりと「自分」というものを持って、課題に取り組んでいる。
メジャーに行って肌で感じた大事なこと-。それは、周りに流されないということだ。周りが気になったりはするけど、あくまで他人は他人、自分は自分。キャンプ期間中、私の場合は、全体練習が始まる前に、個別のウエートトレーニングのメニューは終わらせるようにしてきた。
キャンプでのテーマは、まずはけがなく乗り切り、シーズンの最初から最後までマウンドで全力を出せるための身体作りだ。昨年の終盤は、かなりバテてしまっていた。さらにいえば、日本でも報道されているように、カット系の球種の習得にも取り組んだ。もちろん、試合で通用しなければ意味がない。実戦を見据えた投球を重ねた。
メジャーに移籍してからは、日本に戻るオフの時期もトレーニングを継続してきた。そのことが、体を良い状態に保つことにもつながっているのだろう。日本のように、チームが秋季キャンプを組んでくれるわけでもない。メジャーでは、オフの時期からすべてが自己管理、自己責任だ。キャンプを経て、シーズンで結果が出なければ容赦なくクビを切られる。
シーズン終了後、家族と過ごす2週間ほどが唯一の余暇になる。そこからすぐにトレーニングを始めるのも、「自分だけが取り残されるんじゃないか」という危機感からでもある。主に中南米などのウインターリーグで試合をこなす選手もいれば、キャンプ地に早く入ってトレーニングをする選手、本拠地の球場で練習する選手、あるいはオフと割り切ってしっかりと休養する選手と、タイプはさまざまだ。大事なことは、すべてにおいて自覚を持つことだ。
私以外にもメジャーでプレーする選手や、かつてメジャーに在籍した選手は日本でもオフに練習を続ける。同じグラウンドで練習をしていることもあり、頻繁に顔を合わせる選手もいる。最近は、こうした流れのせいか、日本のプロ野球に在籍している選手でもオフを休まない習慣が定着してきているようにも思う。
医学的な進歩もあり、選手寿命も伸びてきた。その中で、1年でも長くプレーするために、日々の過ごし方が大切になってくるのだろう。(レッドソックス投手 上原浩治/SANKEI EXPRESS)