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【ボクシング】「偉大な悪役」君臨 英雄屈す 世紀の対決 メイウェザー判定勝ち
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リードパンチを応酬し合うフロイド・メイウェザー(左)とマニー・パッキャオ。「世紀の対決」は片時も目が離せない濃密な内容だった=2015年5月2日、米ネバダ州ラスベガス(AP) ボクシングの「世紀の対決」と注目された世界ウエルター級王座統一戦12回戦は2日(日本時間3日)、米ネバダ州ラスベガスのMGMグランドアリーナで開催され、世界5階級制覇のフロイド・メイウェザー(38)=米国=が、世界6階級制覇のマニー・パッキャオ(36)=フィリピン=に3-0で判定勝ちした。「マネー(金の亡者)」と揶揄され、防御型の試合運びと傲慢さで不評を買っているメイウェザーは、脚本通りの展開で決戦を制し、「歴史の本が書かれるなら、この一戦に重きが置かれるだろう」と勝利を誇示。偉大なるヒール(悪役)の面目を躍如した。
3人のジャッジの採点は、2人が116-112、残る1人は118-110という大差で、メイウェザーは自身が持つ世界ボクシング協会(WBA)と世界ボクシング評議会(WBC)の両王座とパッキャオが保持していた世界ボクシング機構(WBO)の王座統一に成功した。
試合は米国で行われながら、観客の声援はフィリピンの国民的“英雄”パッキャオ一辺倒で、メイウェザーにとっては逆ホームタウンの完全アウェー状態だった。試合開始時の選手アナウンスでリングアナは“マネー”の枕詞を付けてメイウェザーを紹介。試合終了直後、勝利を確信したメイウェザーがリングロープにかけ上がり、「どうだ」とばかりに胸をたたくと、会場は大ブーイングの嵐に見舞われた。
勝利のポイントは超絶のディフェンスだった。パッキャオの攻勢に常にステップバックを余儀なくされロープを背負いながらも、抜群のボディーワークでパンチを外す。中盤以降はノーモーションの巧みな右ストレートで、左の相打ちを狙ってくるパッキャオの攻め足を鈍らせた。最大の持ち味、スピードは最後まで落ちなかった。
危険を冒さず確実にポイントを奪うメイウェザーの退屈な試合運びはしばしば「タッチボクシング」などと揶揄されるが、この日の試合はいささかも「世紀の対決」という評価に違(たが)うものではなかった。倒すか倒されるか、ミリ単位の攻防でパンチを交えた超ハイレベルのファイトだった。パッキャオは試合後、「私が勝ったと思った。なぜなら彼は何もしていない。ジャッジの判断は違ったが…」と話し、敗戦を受け入れがたい様子だった。
メイウェザーは、この日もヒールとしての自らの役どころを受け入れ、観客には悪態をつくなどしたが、敗者のパッキャオには最大限の敬意を払い、スポーツマンとしての素顔ものぞかせた。試合終了直後も、記者会見場でも、自らパッキャオに歩み寄り、肩を抱いた。そして、「彼はすごいファイターだった。なぜ頂点を極めたボクサーなのかが実際に戦ってみてよく分かった。厳しい相手だった」とパッキャオをたたえた。
その言動はヒールのイメージとはかけ離れたものであり、「人間メイウェザー」の真の強さを見た思いだったファンも多いに違いない。
プロデビューからの連勝記録を「48」に伸ばし、無敗のまま引退した元世界ヘビー級王者、ロッキー・マルシアノ(1923~69年)の持つ連勝記録にあと1つと迫った。だが、メイウェザーは試合後の会見で9月に予定する試合限りでの引退の可能性を示唆。「9月が自分にとってラストファイトになる。その試合をやって終わりにする」と語り、「自分の成績は49戦無敗で十分であり、50勝の大台にこだわりはない」と明言した。
本当にあと1試合でリングを去るのか。希代のヒールから今後も目が離せない。(SANKEI EXPRESS)