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心に訴える線 社会派画家の奥行き 「丸沼芸術の森所蔵 ベン・シャーン展」

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心に訴える線 社会派画家の奥行き 「丸沼芸術の森所蔵 ベン・シャーン展」

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 シャーンが社会派の画家として活躍し出した1930年代は、29年の世界恐慌で失業者が街にあふれていた。国が失業対策として展開した街中の壁画制作にも携わり、労働者や移民を描いたほか、第二次世界大戦中から戦後にかけては、反ナチスや完全雇用を訴えるポスターも制作した。

 日本に関わる作品として残るのが、第五福竜丸の問題(1954年)を扱った「ラッキードラゴン・シリーズ」(1957年)。第五福竜丸は、ビキニ環礁で、米軍による水爆実験のために被爆したマグロ漁船。その出航や網元の男、死亡者の久保山愛吉さんらを描く。会場には挿絵と習作計10点が展示され、とくに久保山さんの悲報にうなだれ、泣き崩れる妻の姿を描いた作品が胸を打つ。

 人間見つめる

 ところがシャーンは、50歳を超えたころから、社会より人間を見つめるような作風に変わった。

 版画集「一行の詩のためには…:リルケ『マルテの手記』より」(1968年)には、人間の孤独や弱さ、何げない自然、ささやかな愛が描かれ、鑑賞者を物思いにいざなう。

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  • リルケの「マルテの手記」を題材にした作品も並ぶ=2015年6月10日、茨城県水戸市(原圭介撮影)

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