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新幹線の進化支えた高速試験車両 スピードにかけた技術者に思いはせる

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新幹線の進化支えた高速試験車両 スピードにかけた技術者に思いはせる

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700系車両に技術が生かされた「300X」 【鉄道ファン必見】

 今年は東海道新幹線開業50周年。開業当初は最高時速210キロで運転していたが、半世紀を経た現在では時速300キロを超える路線もある。そんな“速さの進化”を支えてきたのは、数々の高速試験車両だ。滋賀県米原市の鉄道総研・風洞技術センターでは、「WIN350」「STAR21」「300X」の3種類の試験車両が保存されている。普段は立ち入り禁止で柵越しでしか見られないが、毎年10月に特別公開されている。鉄道少年から筋金入りのマニアまで魅了する「新幹線の聖地」で、スピードにかけた技術者たちに思いをはせた。(桑波田仰太)

 データ収集に血眼になるマニアたち

 10月11、12の両日、JR米原駅に隣接する鉄道総研・風洞技術センターで、3車両が特別公開された。同センターでは例年、「鉄道の日」(10月14日)前後に特別公開を実施しており、今年は東海道新幹線50周年とあって、米原駅での記念イベントと合わせて行われた。

 保存されているのは、JR西日本のWIN350とJR東日本のSTAR21、JR東海の300Xのいずれも先頭車両。この3両を一度に見ることができるのは全国でもここだけ。それだけに、どの車両も親子連れからマニアに至るまで長蛇の列ができていた。

 公開期間中は車両に触るのも、車内に乗り込んで運転席に座るのもOK。車両内に入ったマニアたちは、隅々まで写真や動画を撮影し、「天井はこっちの方が高い」「運転席はどれもシンプルだね」などと鉄道談義に花を咲かせていた。なかには、「自宅で試験車両の模型を作るため」とデータをびっしりとノートに書き留めている人もいた。

 実際に、3両を見比べてみると、それぞれに“速さ”にかける思いが詰まっていた。

 「WIN350」は、500系の原型

 JR西が平成4年に製造した「WIN350」は、薄紫色とグレーのツートンカラーに中央にブルーのラインが走っているのが特徴だ。西日本の「West」と革新を意味する「INovation」の頭文字を合わせ、最高時速350キロを目標にしていたことからこの愛称が命名された。

 実際に、その年に時速350・4キロを計測し、新幹線最高速度の日本記録を塗り替えた。

 昨年3月に引退した「新幹線500系電車」の試作車として位置づけられており、正式名称は「新幹線500系電車900番台」。現在でも鉄道ファンの熱い支持を集める500系の特徴である丸みを帯びた車体ではないが、JR西の担当者は「500系の特徴は、何といっても戦闘機のようなロングノーズの先頭車両。500系の高速化と低騒音化の技術は、間違いなくWIN350で培われた」と振り返る。

 東北新幹線に脈々と受け継がれる「STAR21」

 ライトグリーンの装いで、先頭部が平面的な造形が印象的な「STAR21」。「21世紀の素晴らしい電車」という意味が込められ、超軽量合金「ジュラルミン」を国内初の鉄道車両の素材に採用するなど、航空技術を取り入れたのが最大の特徴だ。JR東は当時の主力車両だった「200系」より車両の高さや幅をコンパクトにして、規格面からも徹底した軽量化を進め、高速化に伴う騒音対策も図った。

 その結果、平成5年には時速425キロと日本記録を更新。世界でも第2位(当時)の速度をたたき出し、話題を呼んだ。

 また、架線から電気を受け取るパンタグラフを、従来のひし形から「く」の字型のシングルアームに変更。その技術は、「E2系」「E4系」「E5系」といった東北新幹線などの主力車両に受け継がれている。

 日本最速を誇る「300X」

 平成7年に完成した「300X」は、翌8年に443キロの最高時速を計測。現在でもリニアモーターカーを除く国内鉄道車両の最速を誇っている。

 当時のJR東海の主力車両だった「300系」より1両当たりのモーター出力を1・6倍に引き上げ、騒音を減らすための技術も組み込まれている。水鳥のくちばしをイメージした先頭車両は、騒音の原因となる空気抵抗を減らせるデザインという。

 また、連結部分の隙間を幌(ほろ)で覆うなど、300Xの試験成果は、「700系」「N700系」などの現在の主力車両の開発にも生かされている。

 3両をじっくりと観察した福井県坂井市の会社員、山田大介さん(23)は、「高速化という目標は同じでも、各社の違いが見えて面白い。『STAR21』の先頭部分下側には、雪国を通行する東日本ならではの除雪装置が付いている」と感心した様子で話していた。

 日本記録を打ち立て、役割を終えた3車両

 同センターでは、世界トップクラスの風洞設備を持ち、新幹線の高速走行時に車両から発生する騒音や空気抵抗を抑えるための技術開発を進めている。ところが、これらの3車両が同センターで実験を行ったことはないという。

 ある担当者は「風洞実験は高速化や騒音対策など、新型新幹線の開発には欠かせない。JR各社がしのぎを削って生み出した試験車両を風洞実験設備のある当施設で展示することが、さらなる新幹線の発展につながると当時の関係者が考えたようです」と解説する。

 実験段階で当時の日本最高速度を記録し、量産車両へ技術を引き渡して役割を終えた3台の試験車両。それぞれの車両をよく見ると、外装にひび割れが入るなど傷みが激しくなりつつある。すぐそばを走る東海道新幹線で、「N700系」がさっそうと通り過ぎていった。

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