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ホンダジェット、夢と情熱は実現するか スポーツカー連想させるカッコ良さ
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ホンダが量産を開始した小型ジェット機の製造現場(同社提供)
ホンダの航空機事業が来年1~3月期に見込まれている超小型ビジネスジェット機「ホンダジェット」の米国での販売開始に向けて本格的に動き出した。ノースカロライナ州にある米子会社ホンダエアロの工場ではジェットエンジンの量産が始まり、機体に関しても別の米子会社のホンダエアクラフトカンパニーで生産が着々と進む。
ホンダは1986年から航空機向けのジェットエンジンの本格開発を始めたというから、2015年の販売開始は足かけ30年での悲願達成ということになる。
先月中旬に取材に訪れたノースカロライナ州の工場では、米国人社員たちの間からも高揚感が感じられた。
創業者の本田宗一郎氏から引き継がれた「夢」や「情熱」を大切にするホンダと、盛り上がることが大好きなノリのいい米国人の相性は良いのかもしれない。
ホンダジェットは最大7人乗りで、多くの富裕層が住むニューヨークから別荘地であるフロリダまで低燃費で飛ぶことができる性能を武器に個人客を主なターゲットにしている。すでに100機以上の受注があるといい、将来的には年間70~100機の販売を見込んでいる。
価格は1機450万ドル(約5億3000万円)で筆者には手も足も出ないが、機体の内部を見せてもらったところ、競合機種よりはキャビンが広いとはいえ、大柄な米国人には手狭なようにも感じた。
プライベートジェットを使うよりは、民間航空便のビジネスクラスで移動した方が快適なのではとも思う。
ただ、空港の安全チェックを通らずに飛行機に乗り込める時短効果やハブ空港を経由せずに地方空港から地方空港に直接フライトできるメリットもある。
また何よりピカピカの機体にはスポーツカーを連想させるカッコ良さがあり、思わず「これが自分のものになったらうれしいだろうな」と想像してしまう。フロリダ州でビジネスジェット販売の仲介を手がけるプライベートジェットによると、「顧客からの関心は高い」とのことだ。
そのホンダジェットは米国経済の回復という上昇気流も得ている。ビジネスジェットの市場規模は2008年に1306機に達した後、リーマン・ショックの影響で、12、13年には675機程度まで減少していた。しかし14年1~9月期は前年同期比9.3%増と回復しており、ホンダは「今後も毎年5%程度の成長が続く」(山本芳春専務)とみる。
ただしホンダジェットの収益性はまだまだ未知数だ。ホンダエアクラフトカンパニーの藤野道格社長は「2020年ごろの単年度黒字を目指す」とするが、投資回収にはさらに長い期間がかかることが確実だ。
またホンダにはビジネスジェットの修理やメンテナンスでの実績がないこともマイナス材料で、航空業界では「ホンダは販売後、初期の購入者へのメンテナンスなどでの満足度を高め、サポート面での品質も証明することが重要だ」とみられている。
ライバルたちも手をこまねいているわけではない。ホンダと競合することになる米セスナ・エアクラフトとブラジルのエンブラエルは今年に入って新型機を投入するなどして、臨戦態勢を整えている。
未知の領域である航空機事業を軌道に乗せられるか。最近ではタカタ製エアバッグのリコール(回収・無償修理)問題で、米国で事故の報告漏れがあったことが明らかになるなど、高い信頼性というホンダのイメージが揺らぐ可能性も指摘される。
こうした問題を決着させ、航空機事業を早期に収益化させることが、ホンダジェットの夢の実現につながる。(産経新聞ワシントン支局 小雲規生)