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アベノミクスの前途を思う 一抹の不安…物価上昇で家計はどうなる?
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安倍晋三首相
「歯ブラシが1本500円!?」
モスクワで15、16日に開かれた20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議の取材で、滞在先のホテルに歯ブラシがなかったため、クレムリン近くの日用品店で歯ブラシを買おうとしたときのこと。値札を見て、思わず声をあげてしまった。
世界の中で物価が高いとされる東京でも、歯ブラシは100~300円程度。モスクワで売られている歯ブラシの価格には本当に驚いた。
安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」では、大胆な金融緩和を行うことで、企業や家庭に「モノの価格がこれから上がりそう」と思ってもらおうとしている。
その結果、企業が余剰資金を設備投資に振り向けたり、国民の消費が旺盛になることで物価が上がり、デフレからの脱却につながるという。
日銀は1月、安倍政権の強い要請を受け、目標とする物価上昇率2%の達成を「できるだけ早期に実現する」と約束した。
だが、あるアナリストは物価目標2%の達成は「経営者が従業員に大盤振る舞いするくらいの賃金上昇が必要」と話す。今も日銀内では2%の達成には懐疑的な見方が根強い。
少子高齢化に伴う需要不足と競争力低下に苦しむ日本企業は、従業員の賃金を抑えることで収益を確保してきた。今年の春闘でも経団連は「足元は凍ったまま」だとして、賃上げに否定的だ。
就職難や終身雇用制度の崩壊に直面する国民にとって、賃金が持続的に上がることはにわかに信じがたく、いきなり財布のひもを緩めることは難しい。
最悪の事態は、収入が増えず、物価だけが上がることだ。モスクワの“高級”歯ブラシを使いながら、将来、物価が上がると家計はどうなるのかと一抹の不安を感じた。
安倍首相には、社会保障と税の一体改革や規制緩和など、デフレ脱却に不可欠な構造改革を成し遂げてほしいと切に願う。(小川真由美)