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アベノミクスで株高、IPOに活気 公開価格上回る初値相次ぐ

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アベノミクスで株高、IPOに活気 公開価格上回る初値相次ぐ

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初値が公開価格の2倍超だったIPO銘柄  新規株式公開(IPO)に活気が戻ってきた。今年に入り、3月末までに実施するのは13社で、前年同期の7社から大幅に増えた。また、今年IPOを実施した全ての企業の株の初値が公開価格を上回るなど、滑り出しは順調で、安倍政権の経済政策「アベノミクス」への期待に伴う株高という追い風を受けている。27日には建売住宅を販売する「パワービルダー」として知られるタマホームが上場する予定で、活性化に弾みがつきそうだ。市場関係者は今年の件数を60社超と、6年ぶりの高水準になると予想している。

 一時ストップ高

 「会社について、(投資家に)理解していただいた結果ではないか」

 今月22日に東証1部に上場したブロードリーフの大山堅司社長は、上場日の堅調な株価について感想を述べ、満足そうな表情を見せた。初値は、機関投資家の需要などをもとに決める公開価格を11%上回る1200円を付け、その後も株価は上昇。一時は値幅制限の上限(ストップ高)の1500円まで上げた。この日の日経平均株価は2%超下落しただけに、健闘ぶりが際だった。

 ブロードリーフは、自動車の整備工場や板金、リサイクル業者向けなどにアプリケーション(応用ソフト)を提供。上場企業の子会社だったが、2009年にMBO(経営陣による自社買収)で独立。支援した米投資ファンド、カーライル・グループはこの日、保有する全株を売却した。

 昨年10月には、カーライルを大株主とする企業が、東証から上場承認を得ていたにもかかわらず、直前で延期された。株式市場の低迷が理由とみられる。上場予定日の平均株価の終値は8546円で、現在より3割超低かった。その後の株価上昇で、出資した投資ファンドが、投資資金を回収しやすい状況になったといえる。

 売買益、次の案件に

 他のIPO企業の株価も上昇が目立つ。電子カルテ開発などのソフトマックスや、野菜ネット通販のオイシックスは上場初日、売り注文に対して買い注文が多く、売買が成立しなかった。その後、付いた初値はソフトマックスが4.2倍、オイシックスは3.1倍と、公開価格を大きく上回った。IPO株の売買で出した利益を、次の案件に投資する個人投資家が多いとみられ、IPO株人気は、市場活性化に一役買っている。

 IPOの件数自体も増えている。12年は48社で、リーマン・ショックの影響が直撃した09年の19社を底に、3年連続で増加。今年、50社以上が実施すれば、07年以来の高水準となる。

 企業がIPOを実施するには、準備に3年程度かかるため、今回の相場上昇やIPO企業の株価堅調を好機とみても、急に上場が増えるわけではない。ただ、SMBC日興証券の渡辺優・企業法人部長は「相場環境が悪くて延期した企業がIPOに踏み切るケースが出てくる」とみており、多くの市場関係者が予想する60社からの上積みも期待できそうだ。

 東京と大阪の証券取引所が経営統合して発足した日本取引所グループは、26日に発表した中期経営計画の中で、「強い日本経済を取り戻すには、イノベーション推進や中小企業支援が欠かせない」として、IPOの活性化を大きな柱とした。

 新規上場が多い新興市場は、東証マザーズと大証ジャスダックが企業誘致を争っていたが、今年1月に東証・大証が統合。一本化して上場推進を進められる状況になった。

 資金調達、新興企業成長の足がかりに

 将来のIPOを目指す新興企業の経営者らを集めて行うセミナーについては、昨年1年間の開催は30回だったのに対し、今年は3月までにすでに20回行うなど、上場誘致の活動を強化している。

 デフレ脱却の推進力となるべき消費拡大には、賃金の上昇だけでなく、牽引(けんいん)される雇用確保も重要だ。

 日本取引所の斉藤惇最高経営責任者(CEO)は「失業を吸収するのに最も強力な方策は、新興企業の創出だ」と強調する。IPOの増加は、株式市場の活性化だけでなく、資金調達で新興企業が一段と成長する足がかりにもなる。

 とはいえ、08年以前はIPOは年100社超が普通で、00年には203社が実施しており、活発だった時期との差はまだ大きい。初値が高かった企業の株価も、その後は軟調になることが多く、短期的な利ざやを狙った資金が多いとみられる。日興の渡辺部長は「初値の高さより、半年、1年経って市場に評価されていることが重要だ」と指摘している。(高橋寛次)

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