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「安倍相場」始まって半年 円安・株高…大転換へ期待高まる
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昨年11月14日に野田佳彦前首相が衆院解散を表明したことを契機に、政権交代や日銀の金融緩和強化の期待から円安と株高が加速した「安倍相場」が始まってから半年がたった。この間円相場は3割近く下落し、日経平均株価は約7割上昇した。こうしたなか、金融市場では、株などのリスク資産への大規模な資金移動を指す「グレート・ローテーション(大転換)」への期待も高まっている。
13日の東京市場では、前週末に英国で開かれた先進7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議で円安や日銀の金融政策への批判を事実上回避できたことが、円安株高を加速させた。
昨年11月14日に1ドル=80円前後だったドル円相場は年明けに90円台を回復し、日銀新総裁に黒田東彦(はるひこ)アジア開発銀行総裁(当時)が選出された3月半ばに95円を超えた。新体制の日銀による大胆な金融緩和策や、米国経済への回復期待などから今月9日、節目の100円を突破して続落している。
円安進行に伴う業績上振れ期待から、株式市場では輸出関連企業を中心に買いが続いている。平均株価は昨年11月14日終値の8664円73銭から、今月13日に1万4782円21銭まで戻し、上昇率は約71%に達している。
安倍相場が長く、勢いを持続してきた背景として、政策や企業業績への期待という国内要因だけでなく、米国など世界の景気が改善する方向にあることも見逃せない。2008年のリーマン・ショック後、債券など比較的安全とされる資産への資金流入が続いたが、これが逆流する兆しが出てきた。
米欧の市場関係者の間では「今年は大転換の年」と期待を込めて語られている。その背景には、金融市場が正常化に向かうとの見通しがある。
リーマン後、欧州債務危機がリスク回避の動きに拍車をかけた。その余波で、比較的安全とされる資産である円が買われ円高が進行。11年には1ドル=75円台前半をつけ、日本経済に大きな痛手となった。
しかし、米欧の金融緩和が景気を下支えする中、昨年末から今年にかけて、欧州危機の懸念が後退。株価に出遅れ感があった日本では、政権交代や日銀の新体制など「緩和マネー」を呼び込む条件が整い、外国人投資家による“日本買い”が加速。中国など新興国の成長鈍化で、日米など先進国への資金流入が目立つ。
みずほ総合研究所の武内浩二シニアエコノミストは「債券への投資割合が減っておらず、大転換はまだ起きていない」と指摘する。本来、値動きが逆になる株と債券、両方の価格が緩和マネーにより高く維持されている状況だ。だが、資金流出が続いていた米国の株式投資信託で、今年は流入超の月が目立つなど「大きな潮目が変化する兆しはある」(武内氏)という。
大転換が起きる決め手とされるのは、米連邦準備制度理事会(FRB)が金融緩和の縮小に動き、債券価格が低下(金利は上昇)する局面だ。
だが、出口戦略が始まれば「景気悪化懸念で株も売られる」(大手証券)と、一筋縄ではいかないという指摘もある。
米系資産運用会社の日本拠点、ピムコジャパンの高野真社長は「日本では資金シフトがすでに始まっており、世界の市場にも影響を与えるだろう」と指摘する。金融緩和強化により、日銀が国債の購入を増やしたことで、債券市場から締め出された国内機関投資家が、外債や株式などへの投資にまわるとの見立てだ。
半年前からの株価上昇で海外の資金を呼び込んだ日本は、投資する側としても存在感を増しそうだ。