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アベノミクスと財界のホンネ 特区構想に疑問投げかける声も

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アベノミクスと財界のホンネ 特区構想に疑問投げかける声も

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成長戦略の柱に「国際戦略特区」を掲げた安倍晋三首相(左)に対し、「特区より規制緩和を」と注文する中野健二郎・元三井住友銀行副会長  安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」の柱となる成長戦略が6月14日に閣議決定されたのを受け、関西財界の重鎮からは評価の声が相次ぐ。しかし、“本丸”と見なされていた規制緩和は「国家戦略特区」の一部に格下げされた印象がぬぐえず、平成23年に指定された「関西イノベーション国際戦略総合特区」との重複感も。結局、「民主党政権下の特区を嫌がり、“看板”を付け替えただけ」(財界幹部)との痛烈な批判も飛び出す。「規制」そのものを抜本的に見直さなければ、乱高下気味の「アベノミクス相場」が本格的に失速してしまう懸念も出てきた。

 評価の一方…

 「強力な規制緩和などで日本のポテンシャルを最大限掘り起こさんとするもので、大いに評価する」

 成長戦略が閣議決定された14日、関西経済連合会の森詳介会長(関西電力会長)はコメントで国家戦略特区を大絶賛した。景気回復を最優先に掲げる安倍政権をもり立てようとの気持ちものぞく。

 ところが、この特区構想に疑問を投げかける関西財界の幹部は意外と多い。

 関西経済同友会の加藤貞男代表幹事(日本生命保険副会長)は取材に対し、「(新たな特区で)関西イノベーション特区がスポイル(損なう)されれば、政策持続性に疑いが生じる」と疑問視。鳥井信吾代表幹事(サントリーホールディングス副社長)も「国家戦略特区が出てくることで、イノベーション特区が後戻りしてはならない」と注文をつけた。

 「ご意見番」も立腹

 かつての同友会代表幹事で、関西財界の「ご意見番」として歯にきぬ着せぬ発言で有名な中野健二郎・京阪神ビルディング社長(元三井住友銀行副会長)は「特区ばかり作って、お題目になっている。規制そのものをなくさないといかん」とバッサリ。

 中野氏は、6月9日付の産経新聞朝刊オピニオン面でも「特区の矛盾を突け」と題して持論を展開。「『特区構想』は何か新しいものを連想させるが、規制が現状に合わないので特区を作るというのならば日本中、特区だらけにするしかない」と成長戦略を批判した。

 確かに、関西イノベーション特区も「規制緩和」が主眼だったにもかかわらず、ほとんど実現されなかった。ようやく、規制緩和を伴う関西国際空港での医薬品輸入手続きの電子化実験が今春に始まったばかりだ。また、医薬品や医療機器を審査する医薬品医療機器総合機構(PMDA)の関西拠点を大阪市に開設する方向で調整が進むなど、光明も見え始めた。

 それだけに、関西財界の別の幹部からも「屋上屋を架す特区はいらない。とにかく規制緩和を急ぐべきだ」との声が上がる。

 民主党政権のイメージ払拭狙う?

 景気低迷を長引かせたとして批判を浴びた民主党政権だが、関西イノベーション特区は民主党政権の“産物”だった。

 主義主張の異なる自民党政権の誕生で、民主党政権時の政策を抜本的に見直すのは当然のことだが、単なる看板の付け替えでは意味がない。

 成長戦略では、法人税減税や農協改革などが盛り込まれず、株式市場はやや冷めつつあるようだ。

 日本維新の会の橋下徹共同代表(大阪市長)は「既得権(を有する勢力)や官僚機構に押し戻されてしまった」と推察したが、事実であれば、民主党政権の轍(てつ)を踏んでしまう。

 成長戦略が腰砕けにならないよう、安倍政権は、抵抗勢力に立ち向かい、規制緩和の“本丸”に攻め込まなければならない。(藤原章裕、内山智彦)

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