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円安・原料高、小売りに値上げの余地 スーパーで値下げ競争続く裏で…何が

ニュースカテゴリ:政策・市況の国内

円安・原料高、小売りに値上げの余地 スーパーで値下げ競争続く裏で…何が

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テレビなど家電の価格は下落幅が縮小傾向にある=26日、東京都千代田区のビックカメラ有楽町店  長引くデフレの下で低価格志向に偏っていた消費者の動向に、変化が生まれ始めた。高級腕時計や宝飾品だけでなく、これまで苦戦を強いられてきたテレビや白物家電、パソコンといった耐久消費財の需要が高まりつつあるほか、セール品以外の衣料品も売れている。一方で、スーパーなどは値下げの動きが進むなど、全面的な物価反転にはいたっていないのが現状だ。

 「こういうのを見ると、欲しくなるよね」。ビックカメラ有楽町店(東京都千代田区)2階のテレビ売り場で、フルハイビジョンの約4倍の画素数を持つ「4Kテレビ」を眺めていた品川区の男性(63)がため息をもらす。55インチで約50万円と通常の商品よりも割高だが、登場し始めたころの薄型テレビを購入した経験を持つこの男性は「この性能で以前と同じ価格なら、安いよ」と言い切る。

 調査会社のBCNによると、6月のテレビの平均販売価格は5万7500円と3カ月連続で上昇。地上デジタル放送移行後は、特需の反動で不振にあえいできたテレビだが、40型以上の構成比率が初めて30%を超えるなど「大型テレビが好調」(BCN)で、ビックカメラでも液晶テレビの販売単価は前年の同時期に比べ30%増で推移する。

 百貨店の売り上げ構成にも変化が見えつつある。6月の全国百貨店売上高は前年同月比7.2%増。6月に前倒ししたセールの効果が大きいが、2カ月連続で衣料品や雑貨、家庭用品など主要5品目が全てプラスに転じ、「セール以外の通常価格品の衣料品に手を伸ばす来店客も多くなった」(高島屋)。

 一方、食料品などへの支出は財布のひもが固く、スーパーなどは値下げ競争が続く。ダイエーは6月8日に食品や日用品など計約700品目を平均15%値下げした。昨年9月から続く値下げ戦略の第5弾で、これまでの値下げ品目数は延べ6700品目にのぼり、対象商品の売上高は値下げ前の1.2倍となった。

 西友も今月5日、食品と日用品の計250品目を9月4日までの期間限定ながら85円に値下げ。今年中に計2000品目以上の値下げに踏み切る方針だ。

 円安や原料高などを理由にパンや食用油などのメーカーは、7月から出荷価格を一斉に引き上げたが、スーパー各社は「メーカーと共同で物流の効率化に取り組み、価格は転嫁しない方向で努力する」(大手)という。ただ、「ツナ缶ではメーカーの値上げ分を販売価格に上乗せした」(都内のスーパー)など、仕入れ価格の上昇を吸収し切れない店舗も少なくない。

 第一生命経済研究所の新家義貴主席エコノミストは「消費の広がりで、小売りにも値上げをしやすい環境が整ってきた。円安や原料高などもあり、徐々に値上げの動きが広がるだろう」と分析している。

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