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ラオス南部、経済特区の開発着手 カンボジア企業進出、日系に照準

ニュースカテゴリ:政策・市況の海外情勢

ラオス南部、経済特区の開発着手 カンボジア企業進出、日系に照準

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 カンボジアの首都プノンペンにある「プノンペン経済特別区社(PPSEZ)」が、ラオス南部サバナケット県で経済特区の開発に着手した。同県はメコン川を挟んでタイとの国境にあり、誘致のターゲットはタイにある日系企業。いわゆる「タイ・プラスワン」の進出先となることを目指すという。

 この経済特区の正式名称は「サバン・ジャパン経済特別区」。PPSEZの上松裕士最高経営責任者(CEO)によると、ラオス政府が2003年に開発を始めた「サバン・セノ経済特別区」(敷地面積954ヘクタール)の中に整備する。

 タイの拠点を移転

 まず、20ヘクタール・12区画で着工した。すでに日系の大手光学機器メーカー「ニコン」が進出を決め、工場を建設している。サバン・ジャパン経済特区はさらに200ヘクタールを加え、将来的には合計220ヘクタールの広さとなる予定だ。PPSEZとラオスの政府機関「サバン・セノ経済特別区委員会(SEZA)」、ラオスの民間建設会社の3者が出資する。

 安定した経済成長で「中進国」となったタイは、外資優遇に対する見直しの動きが出ている。また、最低賃金が全国一律で引き上げられたこともあり、タイから生産拠点などを他国に移転する「プラスワン」としての進出先のニーズが高まっている。

 タイ・プラスワンとして最も有力なのは、国境を接するラオスやカンボジア。ただ、それぞれに一長一短がある。カンボジアは、労働力が豊富だが、東南アジア諸国で最も電気代が高い。一方のラオスは、電気代がカンボジアの3分の1ほどだが、人口が少ない。上松CEOは「それぞれの長所を生かし、カンボジアで取り込めないニーズをラオスで取り込もう、というのが私たちの狙いです」と話す。

 上松CEOによると、ラオスの経済特区内の優遇措置は、カンボジアよりも充実している部分がある。たとえばラオスの法人税は「利益が出てから10年間」にわたり免除される。カンボジアの「操業開始から9年を上限」とする免除期間よりも長い。また、免除期間後も、一般の法人税率24%よりも安い8%が保証される。

 労働力確保が課題

 サバン・セノ経済特別区委員会のボアカム委員長は、日本への留学経験があり、日本語を流暢(りゅうちょう)に話す。日本人や日系企業のことをよく知るボアカム委員長は「ラオスの経済発展基盤をつくるために、日系企業の進出が必要」と語る。また、カンボジアでの日系企業誘致の経験が豊富なPPSEZの進出を歓迎し、その手腕に大いに期待している。

 ただ、ラオスは労働力の確保が進出のネックだ。ラオスの新規就労人口は20年には10万人に達する見込みだが、周辺国と比べて少ない。

 そこで上松CEOは、カンボジアでの労働力確保の手法を活用するつもりだ。労働力が豊富とされるカンボジアでも、求職者と求人側とのマッチングには労力を要する。求人を呼び掛けるラジオCM、若者が住む村への企業説明行脚、村の長老たちを経済特区に招いて若者たちの職場を知ってもらうツアーなど地道な活動が欠かせない。上松CEOは、これまでのカンボジアでの取り組みが、ラオスでも生かせると考えている。

 「カンボジアでPPSEZを始めた06年には、今日のような日系企業進出ブームが起きるなどと誰も思っていなかった」と上松CEOは振り返る。サバン・セノ経済特区も、03年に開発が始まってから08年にマレーシア資本の経済特区が建設されるまで、進出らしい進出はなかった。

 「大事なのは、成功モデルを作ること。サバン・ジャパン経済特区でも、まずは日系企業10社ほどを誘致して実績を作りたい」と上松CEOは意欲を示した。(カンボジア邦字月刊誌「プノン」編集長 木村文)

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