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カンボジア、建設労働者が不足 賃金高いタイなどへ流出

ニュースカテゴリ:政策・市況の海外情勢

カンボジア、建設労働者が不足 賃金高いタイなどへ流出

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 建築ブームにわくカンボジアで、建設労働者が不足している。好景気で不動産セクターが回復、建築物件が増えていると同時に、より賃金の高い隣国タイなどへ労働力が流出していることが理由とされる。カンボジア政府によると、国内の建設セクターは2012年に21億ドル(約2078億円)規模となり、前年比で72%の伸びを示した。また、国内で登録されている建設・デザイン関係の会社数も年々増加し、12年には1200社を超えた。

 新築ラッシュの中

 特に首都プノンペンで建築ラッシュが続いている。目抜き通り沿いや町の中心部に、大型商業ビルが建設され、家具などが備え付けられてホテル機能も持ち合わせたサービスアパートなどの集合住宅も相次いで建っている。

 世界銀行のデータによると、12年にカンボジア全土で認可された建築プロジェクトの総額は前年比で36%の伸びとなったが、プノンペンだけでみると前年の3倍に膨らんだ。

 一方、現場で働く建設労働者は不足が目立ち、建設計画に影響を及ぼすほどになっている。

 「200人の労働者を確保しようと思ったら、2カ月はかかる。以前はすぐに見つかったのに」。カンボジアの大手建築会社の担当者は、地元紙にそう語った。また、別の建設会社の担当者は「現在50人の労働者を雇っているが、本当に必要なのはその倍以上の人数だ」と話す。

 労働者不足の原因として指摘されるのが、タイなど外国への「出稼ぎ」だ。

 タイは今年1月、労働者の最低賃金を一律1日300バーツ(約1000円)に引き上げた。それまでもバンコクなど都市部ではすでに300バーツに引き上げられていたが、全国一律となったことでさらにカンボジア人労働者の流出が加速したもようだ。

 カンボジアの最低賃金は、3月下旬、他セクターの基準となる縫製・製靴業で月80ドルに引き上げられたが、それまでは月61ドルだった。月20日余り働いたとして、1日の賃金は3ドル前後。タイの3分の1程度だ。

 激化する争奪戦

 地元労働者を確保するため、カンボジア国内の建設会社は賃金引き上げを迫られている。現在、建設労働者の1日の賃金は4ドル50セント程度といわれ、この1年で1.5倍に跳ね上がった。さらに現場に寝泊まりできる簡易宿舎を用意するなど、労働者争奪戦は激しさを増しているという。

 それでも、「1日で10ドル稼げる」とされるタイへの流出は止まらない。タイ国内には現在、合法と違法を含め、約30万人のカンボジア人が移民労働者として暮らしているとされる。建設労働者に限らず、工場労働者やメイドとして外国で働くことを選ぶカンボジア人は増えており、国内の労働市場は軒並み労働者不足にあえいでいる。たとえば縫製業界では約70万人が働いているが、「さらに5万人の労働者が必要」(カンボジア縫製業協会)という。

 フン・セン首相も、労働力流出が経済発展を妨げることを懸念し、国内経済界に対して賃金引き上げなど労働環境の向上に努めるよう、たびたび訴えている。(在カンボジア・ジャーナリスト 木村文)

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