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【底流】「NISA」口座予約めぐり争奪戦 高級志向で投資熱刺激
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個人投資家らを対象にした投資セミナー。証券会社はくつろげる雰囲気づくりにも知恵を絞っている。 来年1月に導入される少額投資非課税制度(NISA)。株式相場の上昇もあり、大手証券やインターネット証券、全国の銀行を合わせたNISAの口座申し込みは100万件を上回るとみられる。特にネット証券は「個人投資家の裾野を広げてきた」と自負しているだけに、手数料の無料・引き下げや、金融商品の品ぞろえ拡充などで競っている。
「さまざまな情報をご自身でよく分析し、(購入を)検討していただきたいと思います」
マネックス証券が7月17日、東京・銀座のレストランで個人投資家約50人を招いて開いた外国株投資信託の商品説明会。同社が、全額費用を負担してレストランで商品説明会を開催するのは5年ぶりだ。
男性投資家(56)は「高級感のある場所で改めて説明を受けると、投資熱が高まります」と興奮気味で、アナリストの説明に熱心に耳を傾けた。同社の美好琢磨執行役員は「今の段階から少しでも多くの投資家に自社に関心を持っていただきたい」と力を込める。
株式市場が活性化する中、金融業界のNISAへの期待は大きい。今まで株式を買ったことのない層を含め、個人投資家の関心が高まっているからだ。
NISAは、年間の投資金額100万円分までの株式投資や投資信託にかかる値上がり益、配当金が非課税となる。全金融機関を通じて1人1口座しか開設できず、4年間は変更できない。このため、口座開設予約を獲得しようと、各社が争奪戦を展開している。
大きな利益をもたらすわけではないが、「今後、個人投資家の限られたパイの奪い合いが激しくなる」(ネット証券大手)とみていることも背景にある。
個人投資家を主力とする大手ネット証券はサービス強化に余念がない。
楽天証券はネット通販サイト「楽天市場」などを運営する楽天グループの総合力をいかし、NISA口座の開設を予約者を対象に、抽選で国内旅行や高級ワインなどをプレゼントする。また、NISA口座で日本株を売買する場合、上限の100万円に達するまでは手数料を従来の1回145円から105円に約3割引き下げる。
マネックス証券は、6月1日から8月30日までにNISA口座を予約した投資家の中から、抽選で100人に現金10万円を贈るキャンペーンを実施している。カブドットコム証券も平成26年中に限り、取引手数料を無料にする。
ネット証券最大手のSBI証券は、日本株を売買する際の手数料を26年中は一律52円にする。また、7月1~31日までに口座を開設した投資家を対象に、7~9月の3カ月間の日本株の取引手数料を無料にする。
ただ、ネット証券各社も手数料の無料や引き下げによる消耗戦は避けたい。必ずしも市場拡大につながらなかった過去の苦い経験があるからだ。
昨年11月には、楽天証券が投資信託などの残高に応じて売買手数料を最大2割り引く新料金体系を発表。発表を受け、SBI証券が無条件で引き下げると表明したほか、GMOクリック証券も手数料を引き下げるなど連鎖した。
だが、手数料の引き下げは、関連会社のシステム開発力を活用してシステム関連の人件費を削減するなど苦肉の策で、「業界全体のパイを広げているとは必ずしも言えない」(大手ネット証券関係者)というのが実情だ。
NISA口座をめぐっては、大手証券でも金融商品の販売手数料を無料化する動きが出ているほか、地方銀行などでも口座予約申し込みに特典をつけるなど、獲得攻勢をかけている。
ネット証券各社も多くの予約を獲得しているとみられるが、数十万件獲得している大手証券などもあるもようで、焦りの色は隠せない。
ネット各社は投資信託を中心に、金融商品の品ぞろえ拡充にも取り組んでいる。SBI証券は、販売手数料がかからないタイプの「ノーロード投信」を業界最大規模となる380本用意しており、今後も品ぞろえを拡充する方針だ。
楽天証券も、NISA口座開設者に提供する1200本の投信のうち、300本はノーロード投信とした。同社の矢田耕一常務執行役員は「20、30代の方にも投資に興味を持ってもらい、日本に投資という文化が根付くきっかけになってもらいたい」としている。(佐藤裕介)