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全日空への優先発着枠、日航は不満あらわ「到底承服できない」
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羽田空港の国際線発着枠は、焦点だった日本航空と全日本空輸の配分枠数で、全日空に優先配分することで決着した。国土交通省は、日航が公的支援を受けて再生したことで不利な状況になったとする全日空の主張を受け入れた格好だ。ただ識者からは、行政の過度の関与を懸念する声も出ている。
「発着枠を有効活用し、利便性の向上や訪日需要の創出に取り組んでいく」
全日空の親会社であるANAホールディングス(HD)の伊東信一郎社長は2日、こうコメントし、全日空への発着枠の優先配分を歓迎した。同社は、日航は公的支援で再生し、全日空との競争環境をゆがめているとして、格差是正のために羽田の国際線発着枠を多く配分するよう求めてきた。
羽田の昼間時間帯の国際線発着枠は、1便につき年間で売上高が100億円程度、営業利益が十数億円のプラスが見込める「ドル箱路線」。今回、日航よりも発着枠を6便多く得たことで、単純計算で年間600億円規模の売上高の差を日航につける要因となる。
一方、日航は「不公正な内容。到底承服できるものでなく、誠に遺憾だ。合理的な説明と内容の是正を国交省に正式に求めていく」とコメントし、不満をあらわにした。
昨年11月末に決まった羽田の国内線発着枠の配分では、全日空が8便を得た一方、日航は3便と大差がついた。日航の業績は足元で堅調だが、収益性の高い国際線で発着枠を十分に獲得できなかったことは経営の痛手となる。バークレイズ証券の姫野良太アナリストは「売上高や利益の減少につながる」と指摘する。
政権交代の影響も見逃せない。自民党はこれまで、民主党政権下での日航への公的支援について「他社との公平な競争環境が損なわれた」と問題視していた。政府筋は、今回の枠配分も「官邸主導で決まった」と明かす。
国交省は2020年の東京五輪開催も見据え、首都圏の羽田、成田両空港の発着枠の拡大に向けた検討を進める。
今後、さらに羽田の発着枠が拡大されれば、再びその配分の行方が焦点となり、政界や行政の考え方次第では航空会社の収益基盤に影響を与えかねない。
早稲田大の戸崎肇教授は「航空会社間の国際競争が激しくなる中で、今後、航空会社はますます経営体力の強化が問われていく。政府の過度の関与は懸念材料でもある」と話している。(森田晶宏)