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「第3の道」中堅航空の苦悩 LCC台頭で価格の優位性崩れ

ニュースカテゴリ:企業のサービス

「第3の道」中堅航空の苦悩 LCC台頭で価格の優位性崩れ

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航空各社のお盆期間(8月~18日)の搭乗率  格安航空会社(LCC)の台頭で危機感を強めている中堅航空会社が、生き残りをかけた新たな料金戦略に乗り出した。スターフライヤーは10月就航の関西国際空港-福岡空港で片道最安を4500円に、スカイマークも今年から座席限定の割引運賃で主力路線の最低価格を1万円とした。LCC並みの“価格破壊”はできないが、LCCより高いサービスと大手より安い運賃で“存在感”をアピールし、大手でもLCCでもない「第3の道」を模索している。

 「サービスなら上」

 「高品質なサービスをお求めになりやすい価格で提供する。それが『ハイブリッドエアライン(いいとこ取りの航空会社)』のサービスだ」。7月30日、関空に駐機した機内で、スターフライヤーの米原慎一社長は“決意表明”した。

 この日は関空-福岡線を10月に開設し、片道運賃は最安4500円で提供すると発表。ただ、この路線はLCCのピーチ・アビエーションとジェットスター・ジャパンが最安3500円前後で提供。価格ではどうしても見劣りする。

 異例の「機上会見」に踏み切ったのは、サービスのよさを強調するため。本革張りのシートはスペースを広く取り、ドリンクは無料。定時運行率などの利便性の高さもアピールし、LCCが見限った“要素”を突く作戦に出た。

 期間限定でキャンセル可

 スカイマークは座席限定の割引運賃「フリー」を1月に改定。現在、主力路線で最低価格を1万円に設定している。加えて一定期日までならキャンセル料が無料などの利便性も高め、LCCへの対抗姿勢を鮮明にしている。

 スカイマークは3月いっぱいで関空路線から撤退。好調を維持する関空拠点のピーチ・アビエーションに押された格好だが、実は「LCCとの消耗戦を避けたい」という意味合いが強い。LCCが就航していない仙台と福岡、新千歳を結ぶ路線に進出するなど、LCCとの直接対決を避けている。

 さらに来年3月から主力の羽田-福岡線で、追加料金を払えば利用できる上級クラスの導入を検討。大手にも“かみつく”構えだ。

 板挟みからの脱出は?

 地方都市を拠点とする中堅航空会社は平成10年ごろから就航を始めた。大手より割安な運賃を掲げて牙城の切り崩しに挑んだが、限られた路線しか運航しない知名度の低さや、大手との価格競争で“返り討ち”にあった。

 さらに相次ぐLCCの就航で、安値という金看板を失い苦戦している。サービス面で大手に、運賃面でLCCにそれぞれ劣り、挟み撃ちの状況だ。地方都市の経済悪化も利用低迷に拍車をかけている。

 「高品質なサービスと低価格という、相反することを提供することは、並々ならぬ努力が必要だ」

 スターフライヤーの米原社長はこう話す。大手にもLCCにもない新たな付加価値を見いださなければ、中堅航空会社の埋没は避けられない。(中村智隆)

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