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韓国、年金改革後退に失望感 財源確保できず支給対象見直し
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韓国で朴槿恵(パク・クネ)大統領が選挙公約に掲げた年金改革が後退し、失望の声が広がっている。公約では老齢基礎年金の支給対象者を高齢者全員に拡大し、支給額も増額するとしていたが、税収減などで財源を確保できず、後退を余儀なくされた。現地英字紙コリア・タイムズなどが報じた。
現在、同国では所得上位の30%を除く65歳以上の高齢者に月額で最大約10万ウォン(約9000円)の老齢基礎年金を支給している。これに対し、朴大統領が公約に掲げた改革案は、支給対象を65歳以上の高齢者全員とし、支給額を一律20万ウォンに引き上げるとしていた。
しかし、政府が先月発表した年金改革案は所得上位の30%を引き続き支給対象外としており、支給額に関しても所得に応じて10万~20万ウォンとするなど、対象と金額ともに公約から後退した内容にとどまった。
保健福祉省によると、同国の65歳以上の高齢者は598万人(2012年末時点)。改革案に基づく支給対象者の内訳は支給額10万以上15万ウォン未満が18万人、15万以上20万ウォン未満が20万人、20万ウォンが353万人となる。これら以外の207万人が支給対象外となる見通しだ。
朴大統領は年金改革案を承認した閣議で「すべての高齢者に支給できず、申し訳ない」と謝罪したが、公約の後退は年金にとどまらず他の福祉政策にも及んでおり、野党の民主党は反発を強めている。
昨年12月の大統領選で朴大統領は、53兆ウォンの歳出削減と増税に頼らない82兆ウォンの税収増を任期5年間で実現し、総額135兆ウォン規模の福祉拡大を図ると訴えて当選した。公約の目玉に掲げたのは年金を拡充するほか、がんなど4大疾患の診療補償の拡大、さらに5歳児までの無償保育実現、大学授業料の半減などだ。
ところが、経済の低迷で税収が落ち込んだほか、景気対策のために歳出削減も進まず、朴政権の福祉政策は公約からの後退が相次ぐことになった。
診療補償拡大は現在も補償枠に関する議論が難航し、大学授業料の半減については15年以降に先送りされる方向だ。無償保育は実現したものの、負担増となった自治体から不満の声が上がる。今年9月には大統領が与野党協議の席で増税を示唆するなど、韓国の福祉政策をめぐる状況は切迫してきている。
地場調査会社によると、この増税発言後に朴大統領の支持率が急落したとのデータもあり、韓国国内では今後、朴政権による福祉政策の行方に注目が集まる局面が増えていきそうだ。(ソウル支局)