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規制改革、新手法で民意喚起 世論味方に強固な“岩盤”に風穴
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築30年超のマンション戸数(予測) 安倍晋三政権は、成長戦略の柱の一つである規制改革を加速するため新手法を導入する。規制をめぐる討論を一般公開して社会的関心を高め、多くの国民の支持を後ろ盾に強固な規制や慣行に風穴を開けようとする試みだ。
第1弾として、28日に開く規制改革会議(首相の諮問機関)の「公開ディスカッション」で、老朽化マンション建て替えの障害になっている規制などを取り上げる。もくろみが当たれば、今後の規制改革のモデルケースになるとみられる。
国土交通省によれば、国内で建設されたマンション約590万戸(2012年末)のうち、旧耐震基準に基づく1981年以前のマンションは106万戸を占める。南海トラフ巨大地震発生が想定される中で、安全対策として、建て替えや耐震補修工事は急務だが、これまでのマンション建て替えの実績は、今年4月までで、全国累積が約180件、1万4000戸とわずか1.3%。このまま建て替えが進まなければ、老朽化マンションは2033年には約450万戸に達するとみられている。
建て替えが進まない最大の理由は、1963年施行の区分所有法で、マンションの居住者(区分所有者)の5分の4の賛同が必要とされていることだ。規制改革会議では、この基準を緩和する方向で議論している。この規定が「今の時代に合っているのか」(規制改革会議委員)が議論の焦点となる。
規制緩和をめぐる議論は「一般的に民間が役所を攻撃し、役所が抵抗する『民間対役所』の構図ができ上がっている」(別の委員)が、今回のマンション規制を所管する国土交通省はむしろ建て替え促進派。対立しているのは、建て替えを進めたい居住者と、反対する居住者。いわば「民間対民間」の構図だ。
規制改革会議の岡素之議長(住友商事相談役)は「規制改革の本質は、現在の規制に守られた既得権益を持つ側と、改革によって新しい利益を生み出せる側とのトレードオフの関係」と指摘する。マンション建て替えの議論が、それぞれの利害を持った国民同士が、どのように折り合いをつけるかになり、それが「規制改革の本質になる」と言い切る。
公開ディスカッションは、規制改革会議の委員や担当大臣、関係団体、改革要望者、所管省庁などが一堂にそろい、一般国民傍聴の中で、議論するものだ。ディスカッションを通し、規制改革の有効性を国民に理解してもらうことで、「岩盤」と呼ばれる強固な規制の切り崩しにつなげる狙いがある。
規制改革会議は安倍政権の下で「規制改革を成長戦略につなげる必要」(岡議長)もある。成長戦略として規制改革をとらえた場合の利点の一つは、新たな財政出動を伴わずに民需を喚起できることだ。
ニッセイ基礎研究所の竹内一雅不動産市場調査室長は「東京、大阪、名古屋などの都市部では、マンション用地探しが難しくなっている。東京都心での需要は増えており、建て替えによるマンションの供給拡大は、大きな経済効果を生む」と指摘する。
28日の第1回公開ディスカッションでは、規制改革の象徴の一つ、医薬品のインターネット販売も取り上げられる。初回にこの2つのテーマを選定したことは、規制改革会議が「岩盤規制」の緩和に全力を挙げると同時に、規制改革を国民的な議論に広げる姿勢を明確に示すものといえる。(平尾孝)