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アパレル業界、消費増税後の秘策は? 買い控え、反動減に備え

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アパレル業界、消費増税後の秘策は? 買い控え、反動減に備え

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消費税に関する調査  来年4月に予定されている消費税率引き上げを前に、アパレル業界が商品戦略に知恵を絞っている。大手各社は、来年3月にアイテム数を例年より多めに準備し、春物商品の前倒し発売などで駆け込み需要に対応。増税後も新規ブランドの投入や販売促進活動を積極展開し、消費者の購買意欲を喚起する。1997年の増税時には、増税後の反動減により売り上げが大幅に落ち込んだだけに、買い控えの抑制に躍起だ。

 上向く商品単価

 国内外の有名ブランドの路面店が立ち並ぶ東京・銀座。今秋は記録的な残暑が続いたため、10月中旬になってようやくコートやセーターなど冬物商品が店内のメーンゾーンに登場し始めた。だが、今年は昨年までと違って、顧客の財布のひもが緩んでいる。

 「10月に入り、7万円以上のウールコートが昨年同月に比べすでに5倍以上売れている」

 そう話すのはオンワード樫山の婦人向けアパレル旗艦店「23区 GINZA」のファッションスタイリスト、秦さくらさん。例年は4万円台がコートの売れ筋価格帯だが、今年は「6万円以上」という。

 日本百貨店協会が発表した9月の全国百貨店売上高で、衣料は前年同月比3.2%増と2カ月連続でプラスと好調に推移。安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」による円安・株高効果を背景に、アパレルの商品単価も上向き傾向にある。

 この勢いをそのままに、秋冬商戦では大規模な駆け込み需要を想定し、同社は例年より高単価商品を積極的に売り出す。

 「ナイロン系ダウンコートの流行が一巡したので、今年はより上質で単価の高いウールコートが売れると判断した」と秦さん。この戦略が奏功し、6万円以上の高額コートの売り上げが前年同月比で約1.5倍に膨らんだ。「駆け込み需要は始まっている」と秦さんは断言する。

 一方「エポカ」「アレグリ」などのブランドを展開する三陽商会では、今回の駆け込み需要は男性にも起きると予想。例年は春先に発売する男性用スプリングコートなどを前倒しして売り出す。

 春先の花粉症対策として花粉アレルギー物質を抑制する特殊素材を使用したコートやシワになりにくい新素材を使用したジャケットなどを増税前に投入する予定だ。

 「4月以降」の秘策

 増税後の販売の落ち込みを防ぐ販促活動にも注力する。オンワード樫山は、販促費を3月まで抑えて4月以降に積極投入する。キャンペーンなどで消費者の来店を促し、購買意欲を喚起する。

 また素材にこだわった新規ブランドを投入。これと合わせ「当社が持っているブランドや財産と複合させるような新規事業も計画している」(清家彦三郎マーケティング室室長)。

 三陽商会は、商品単価を下げないための戦略を練る。阪本直也ブランド事業部長補佐は「より価値観のある商品で値ごろ感を演出する」と話す。駆け込み需要のある3月まではあえて展開しない斬新なカラーやプリントをあしらった春物を投入し、消費を促す計画だ。

 日本総合研究所の小方尚子主任研究員は「前回の増税はアジア通貨危機などによる景気後退の影響を受け、増税後に急速に買い控えが拡大した」と分析。「今回はアベノミクス効果もあり、質の良いものを選ぶ消費者動向は増税後も変わらない」と強調する。季節要因や流行など不確定要素に流されやすいアパレル業界だが、現在の好調な消費動向を維持する「解」を求めて模索している。(西村利也)

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