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近づく証券優遇税制廃止 年末にかけ売り圧力も
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東京市場の円安・株高の今後の動きについて、市場関係者の見方は分かれている。株価については、企業業績や緩和政策の継続などを背景に高水準が続くとの見方もある一方で、株価のマイナス材料とみられているのが、年末に予定されている証券優遇税制の打ち切りだ。
株式の配当や譲渡益などにかかる所得・住民税は、個人金融資産を株式市場に誘導する狙いで2003年から10%の優遇税率が適用されてきたが、来年1月からは11年ぶりに本来の20%に戻る。このため、約1年前からの株価上昇で含み益が出た株式の売却に踏み切る個人投資家が年末にかけ急増する可能性があり、動向と影響が注目されている。
SMBC日興証券は5月、優遇税制廃止に向けた対策をまとめた個人投資家向けの資料の配付を始めた。植村繁ソリューション企画部次長は「(優遇税制に関する)相談件数は足元で増えており、10~12月には7~9月の4倍程度になる」とみる。
優遇税制廃止は個人投資家にとって、優遇税制の廃止のインパクトは決して小さくない。
例えば、200万円で購入した株式が1000万円に値上がりしていた場合、年内に株式を売却すれば税額は80万円だが、来年1月以降、同額の株式を売却した場合は2倍の160万円となる。
カブドットコム証券の河合達憲チーフストラテジストは「12月に入れば個人投資家の売りがピークになる」としながらも、「売却後に再び株式を購入する個人投資家も少なくなく、影響は限定的」と指摘する。
英系資産運用会社のフィデリティ投信が約3000人を対象に実施したアンケートでは、年内に何らかの方法で「株を売却する」と回答した個人投資家は全体の約4分の1にとどまった。
だが、想定以上に多くの個人投資家の売りが重なれば、株価の下落要因になる可能性も否定できない。
来年1月に始まるNISA(少額投資非課税制度)では、専用口座の開設が必要で、既に保有している株や投資信託はこの口座に移せないからだ。年末までに株価が大きく下落する事態を避けられるのか、市場の注目が集まっている。
□三菱UFJモルガン・スタンレー証券 藤戸則弘投資情報部長
◆株価の最高値(円の最安値)
1万6000円
◆コメント
企業の業績回復で堅調な株価は続くが、緩和縮小観測から米金利が上昇すれば悪影響も
□野村証券 松浦寿雄シニア・ストラテジスト
◆株価の最高値(円の最安値)
1万5250円
◆コメント
政策が株価を大きく押し上げるとは考えにくいが、米国の株高など海外要因で5月の高値を超える可能性
□ニッセイ基礎研究所 上野剛志シニアエコノミスト
◆株価の最高値(円の最安値)
1ドル=102円50銭
◆コメント
足元の円安は揺り戻しの可能性がある。円安への潮流をつくるのは米緩和縮小による日本との金利差拡大だ
□SMBC日興証券 嶋津洋樹シニアマーケットエコノミスト
◆株価の最高値(円の最安値)
1ドル=100円程度
◆コメント
米景気指標の大幅な改善などで緩和縮小が意識されれば円安が進むが、それがなければ不安定な動き