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パキスタン、電力安定供給を模索 石油依存脱却へ原発増強計画
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パキスタンは電力の安定供給に向けて模索を続けている。同国政府は2050年までに原子力発電で4000万キロワットの電力増強を図る計画を打ち出したが、安全性などを懸念する声も聞こえる。現地英字紙エクスプレス・トリビューンなどが報じた。
同国の電力需給は現在、需要が1500万キロワットに対し供給は1100万キロワットとされる。世界銀行によると、配電網から外れている世帯は全世帯の44%に達し、このうち8割が地方の農村などに暮らす。都市部でも計画停電が日常的に実施されるなど、パキスタンの電力事情はきわめて不安定な状況が続いている。
背景にあるのがパキスタンの特殊な電源構成だ。同国の発電用電源は石油が36%と最も多く、以下、ガスと水力が各29%、原子力が5%、石炭が1%となっている。世界平均は石炭が41%、ガスが21%、水力が16%、原子力が13%、太陽エネルギーなど再生可能エネルギーが3%で、同国は石油依存が目立つ。
原油価格の高騰などが発電増強の妨げとなっているため、同国政府は電源の多様化に着手。なかでも原子力発電に注力しており、昨年12月にはカラチ近郊で発電能力が合計220万キロワットとなる原発2基の建設を開始した。この計画は中国が技術支援の他に、総額95億9000万ドル(約9804億円)の建設費用のうち65億ドルを支援するとされている。
専門家はカラチが近郊を含めて人口1200万を超える大都市圏であることを踏まえ、新原発が安全性、設計、コストの各面で不安が残ると指摘。「原発のリスクと隣り合わせで生活したくないという住民が今後増える可能性がある」と述べ、計画の難航を予想した。
こうした声に対し、アシフ水利・電力相は原子力発電が100万キロワット増加するごとに石油燃料の輸入コスト10億ドルが削減できると主張し、建設は必要との認識を示した。また、「低コストで環境負荷が少なく、かつ資金が集まる電力計画が他にあるなら提示してほしい。喜んで検討する」と述べ、現時点では原子力が電力増強に向けた最善の選択だと強調した。(ニューデリー支局)