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【女性“活用”の現実】(中)専業主婦願望、増加の背景は 難しい仕事と育児の両立

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【女性“活用”の現実】(中)専業主婦願望、増加の背景は 難しい仕事と育児の両立

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 ■【女性“活用”の現実】(中)

 長時間労働が前提

 「一流企業には入りたいけど、子供が生まれたら子育てに専念したい」

 難関国立大学に通う女子学生たちが口々にそう言うのを、一橋大大学院商学研究科のクリスティーナ・アメージャン教授は、複雑な思いで聞いている。みんな成績優秀だが、野心はかつての若者ほどにないと感じる。

 アメージャン氏は1980年代に日本企業に入社。ハーバード大を出た自分の仕事は、灰皿の片づけだったのを思い出す。

 「過去に比べて改善したと、日本企業は満足してはいけない。国際競争が不可避のいま、男性ばかりの組織が世界でいかに異様かを知るべきだ」とアメージャン氏。多くの日本企業は残業、飲み会で長時間労働が前提だ。家事で夫の助けは、たいして期待できず、子育てをしながら働くことが「女子学生には魅力的にみえない」と指摘する。

 共働き世帯が増え、安倍晋三政権が一層の女性活用を働きかける一方で近年、女性の間で専業主婦願望が高まっている。厚生労働省の調査では、独身女性の3人に1人は専業主婦を希望。内閣府の2012年の調査では「夫は外で働き、妻は家庭を守るべきだ」と考える人の比率が前回(09年)より10.3ポイント上昇し51.6%になった。20代では20ポイント近く伸びた。

 東レ経営研究所の渥美由喜ダイバーシティ&ワークライフバランス研究部長は、若年層の専業主婦願望について「夫の給料が右肩上がりで専業主婦が主流だった母親世代への“憧れ”がある」と分析する。

 容易でない再就職

 とはいえ出産・育児を機に仕事をやめ、多くの女性が望む専業主婦となっても、経済的な理由などから、再び働く選択肢にたどり着く人は少なくない。

 川崎市在住の女性(47)は17年間の専業主婦生活を経て、昨秋に教材販売の営業職を得た。女性の再就職を支援する日本女子大学(東京都文京区)リカレント教育課程に1年間、通った末の再就職だ。長いブランクで仕事復帰は不安だったと言い、「育休や時短勤務がとれるなら、出産で仕事はやめない方がいい」と実感を込める。

 東京都杉並区在住の1児の母(30)は今春から、就職のために職業訓練学校に通い始めた。前職はアパレル販売。土日は必ず出勤、深夜に帰る生活で、育児との両立は不可能と離職した。子供が2歳を迎え、経済的な余裕やスキルアップを求めて再び働こうと決めた。

 自治体の待機児童解消の緊急対策で、何とか保育園も決まった。「母子ともに社会に出て新たな出会いに恵まれた」と感じる。

 新しい動きもある。「ハウスワイフ2.0」(文芸春秋)という本が話題だ。米国中産階級の女性たちが企業を離れ、インターネットで手作り品を販売するなどして稼ぐ「新しい主婦」の話。日本でも「仕事と育児の両立環境が不十分な中、会社にしがみつくよりはと、こうした“兼業主婦”志向も生まれている」(渥美氏)という。

 子育てに専念するのも、仕事に打ち込むのも、ほどほどに働くのも個人の自由。ただ、保育所不足はもとより、「仕事量は男女平等でも家事・育児は女性」「長時間労働で家族を犠牲にするのはやむなし」といった社会の意識が女性の働く意欲を萎(な)えさせているとすると、日本は人材をみすみす失っていることになる。

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