ニュースカテゴリ:政策・市況
国内
日銀「物価上昇2%目標」風前の灯 賃上げも限界
更新
全国消費者物価(生鮮食品を除く)は、消費税増税の影響を除いた指数が4月の1・5%をピークに鈍化しつつある。円安による物価押し上げ効果が剥落し始めたためだ。「当面1%台前半を維持し、今年度後半に再上昇に転じる」(黒田東彦総裁)という日銀のシナリオの実現には消費の力強さが欠かせない。ただ、企業の多くは一段の賃上げには慎重で、2%の物価上昇目標の達成には不安も漂う。
「高付加価値品の投入で家電の価格が上昇している」(白物家電販売の日立アプライアンス)。「嗜好品は価格が上昇しても売れ行きは落ちない」(味の素ゼネラルフーヅの横山敬一社長)。夏のボーナス商戦が堅調な消費の現場について、経営者からは前向きな発言が聞かれる。
6月の消費者物価指数は、調査対象524品目のうち466品目が前年同月比で上昇。上昇品目の数は5月の469からはわずかに減ったが依然、幅広い品目で物価上昇が続いており、日銀の中曽宏副総裁は23日に静岡市で講演し、「デフレの制圧が視野に入ってきた」と自信を示した。
しかし、日銀が想定する「今年度後半に再上昇」という物価シナリオに対し、市場は懐疑的だ。民間エコノミストの予測では、物価上昇率は今夏に1%を下回り、平成27年度1%台前半にとどまるとの見方が多い。再上昇を受けて、27年度の上昇率が1・9%に達するとの日銀の予測とは大きな乖離がある。
労働需給の引き締まりが所得環境の改善を促し、内需の回復基調が続く-。これが日銀の強気の物価予測の前提だ。
だが、今春闘で賃上げを主導した大手自動車からは「物価上昇分を賃金に反映させたいが、競争環境が熾烈で慎重にならざるを得ない」との声が漏れる。
物価上昇に賃金の上昇が追いつかなければ、実質賃金の目減りが個人消費を下押しするリスクが高まる。実際、景気の先行きについて、ファーストリテイリングの柳井正会長兼社長は「物価上昇は続くだろうが、懸念は(不況下で物価が上がる)スタグフレーションの可能性があることだ」と指摘する。
企業が今後も賃上げの動きを継続・拡大できるかが景気の好循環を持続させ、日銀が目指す物価上昇率2%を達成するための課題になる。(万福博之)