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就職難、自殺…希望持てない韓国の若者 雇用制度改革に不満の声消えず
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昨年12月に憲法裁判所が決定した左派系とされる統合進歩党の解散をめぐり異論を唱える市民。政策への不満は大きい(AP) 衆院選での自民圧勝を受けて、安倍晋三政権が「岩盤規制」に位置付けた雇用制度の改革が始まろうとする中、韓国ではひと足早く、労働体系に大胆なメスが入れられる。韓国政府は昨年末、会社側にとって働きの悪い正社員を解雇する際のルールを明確にしたうえで、労働契約を解除できる仕組みを整える方針を打ち出した。
一方で、期間労働者の契約期限は2年間延長できるようにする。韓国では、正社員への転換を信じて働いたにもかかわらず、契約を打ち切られた期間労働の女性が昨年に秋に自殺。こうした正規と非正規との格差問題を背景にした労働市場改革だが、若年層を中心に不満の声は消えることはない。経済政策を批判した壁新聞がはられる大学まで現れ、波紋は広がるばかりだ。
韓国政府が昨年末に発表した非正規職総合対策案。毎日経済新聞(WEB版)によると、職業能力に欠け、成果を上げられない正社員を解雇する際の基準を示したガイドライン(指針)が設けられるという。
これまでも解雇に踏み切るには、それなりの「正当な理由」が必要だったが、具体的な基準がなかったため、雇用継続が労使紛争の火種になりがちだった。頻発する労使対立が韓国経済の足を引っ張っているとの指摘もある。
政府案では、客観的な基準からみて、能力が劣る従業員に対して、教育や配置転換を実施。これらの努力にもかかわらず改善できなければ、「最後の手段」として労働契約を解除できるようにするという。
正社員の新陳代謝を促して、能力を高い従業員を雇えるようになれば、生産性のアップにつながり、韓国の経済競争力を高められるとの思惑がある。
一方で、期間労働者として2年間勤務できる制度を一部改め、35歳以上の者に限って2年延長し4年間働けるようにする考えだ。
韓国政府が制度の見直しに熱心になるのは、若者を中心に就職難への不満が溜まっていることも背景にある。
昨年9月には非正規雇用問題が大きくクローズアップされる事件があった。正社員への転換時期を2日前に控えて、雇用契約の解除を通告された20代の女性が自殺したのだ。
「努力すればできると考えて最善を尽くした。24カ月ギリギリまで使って捨てられた」
韓国のハンギョレ新聞(電子版)によると、女性は遺書にこう吐露していたという。
女性は中小企業中央会という団体に契約で入社。約1年半後に人事担当者から正規への転換を打診されていたという。中小企業の経営者を対象にした教育研修過程を担当していたが、「セクハラを受けた」との内容メールを雇用主側に送ったあと、契約の解除を告げられた。その後日、自ら命を絶ったという。
韓国は世界的にも自殺率の高さで知られ、10代、20代、30代の死因の1位が自殺。学業や暮らし、将来の不安が若者を苦しめている。
聯合ニュースによると、2013年の統計分析では、韓国の若者の5人に1人が1年以下の契約社員として社会人生活をスタートを切らざるを得ない状況にある。1年以下の契約職で社会人生活を始めた若者の数は、09年は53万6千人だったが増加傾向にあり、13年は82万9千人と大幅に膨らんだ。
リーマンショックによる景気低迷が契約社員を慢性的に増やし、正社員の抑制を招いているとみられる。
韓国には「三放世代」と呼ばれる言葉がある。就職難で「恋愛」→「結婚」→「出産」をあきらめてしまった若者たちのことだ。
安定した仕事につくことが韓国の若者の切なる願いのはずだが、政府がとる雇用政策は正社員減らしにつながりかねないとし、逆に反発の声を呼んでいる。
中央日報(電子版)によると、昨年12月30日にはソウルの慶煕大学にチェ・ギョンファン経済副首相の経済政策を批判する内容の壁新聞がはられたという。
韓国の経済危機の解決方法を書かせる答案形式で、崔副首相が推進する労働市場改革などを解答として記載した用紙に落第点を付けたものだった。壁新聞を書いた学生は「(副首相は)非正規職量産を対策に出した。問題を解決するどころか不安な雇用を量産するというのは間違いだ」と話したという。
延世大学と高麗大学にも壁新聞は登場した。
「正規職員が過保護のため企業が恐れて人材を採用できずにいる」と語ったというチェ副首相。制度改革は、正社員の過度な年功序列型賃金の体系を崩す可能性がある。それが雇用の枠を広げ若者の活力の創造につながるのか、むしろ将来不安を増幅させるのか。議論は尽きないようだ。