SankeiBiz for mobile

ガス自由化は経産省に軍配 業界抵抗も「電力と一体」になすすべなし

ニュースカテゴリ:政策・市況の国内

ガス自由化は経産省に軍配 業界抵抗も「電力と一体」になすすべなし

更新

中部電力川越火力発電所内にある伊勢湾横断ガスパイプライン=三重県川越町  「岩盤規制を打破する」と話す安倍晋三政権が、市場自由化の狙いを定めた分野の一つがエネルギー業界だ。政府が今通常国会に提出する予定のガス事業法改正案では、2017年をめどに都市ガスの小売り全面自由化を実施することや、大手都市ガス3社に対し導管事業の分社化を義務付ける時期を22年4月1日とすることなどが盛り込まれた。ガス業界は、自由化が議論された経済産業省の小委員会を舞台に徹底抗戦を繰り広げたが、最後は「電力と一体」改革を目指す経産省に押し切られた。

 「導管分離」案が潮目

 ガス改革を有識者が議論する経産省資源エネルギー庁のガスシステム改革小委員会は、13年11月から始まり、翌年春には料金規制の撤廃方針を決めた。

 家庭向けガスの料金は、電力と同じように、ガス会社の経費に利益を上乗せした料金を経産省が認可する。この料金規制を廃止して新規参入を促せば、販売価格の引き下げやサービス向上につながるというが経産省の狙いだった。これに対し、ガス業界は「ガス事業は電力とは違い、200超の事業者がある。無理に自由化を進めれば、規模の劣る事業者は耐えられない」と抵抗を試みた。

 小委員会では、委員の多くが「現状維持というわけにはいかない」と、ガス市場改革の趣旨に賛同。自由化論の入り口にあたる料金規制の撤廃と、小売りの全面自由化の方向性が固まり、まずは自力に勝る経産省がガス業界を寄り切った。

 風向きが変わったのは昨年夏。経産省は、大手都市ガスが持つパイプラインの担当部門を切り離し、別会社にする「導管事業の法的分離」案を提案したからだ。

 電力改革をめぐっては、経産省は同じく今通常国会に提出する予定の電気事業法改正案に、大手電力会社の送配電部門を切り離す「発送電分離」を20年4月1日に実施すると盛り込んだ。電力大手が送配電網を抱えたままだと、送電線の利用料などについて、新規参入業者を不利に扱う恐れがある。新規参入者との競争条件を公平にするには、法的分離が不可欠だとの判断が背景にある。

 分離案を持ち出した経産省ガス市場整備課は、電力改革と同様の効果をガス市場でも狙っている。経産省幹部の念頭には、自由化後、電力とガスの事業者が相互参入して競い合う構図がある。電力改革と足並みをそろえる形でガス改革も進めることができなければ、「電気の自由化も未完に終わる」との懸念もあった。

 だが、ガス業界の抵抗は熾烈(しれつ)だった。「法的分離をすれば、地震などの緊急時にガス導管の保安作業がままならなくなる」「ガス導管の維持管理コストが上がり、ガス料金の上昇につながる」「公平な競争を確保するための、ガス業界の自主的な取り組みを確認すべきだ」など、理論武装して攻勢をかけた。

 その年の秋を迎えると、委員の間では、導管分離に進むことへの慎重論が広がりはじめた。

 永田町が衆議院解散・総選挙に目を奪われていた昨年12月初旬の小委員会。「ガス事業は現状のままでいいわけではないが、導管部門の法的分離の決定は慎重に臨むべきだ」「法的分離を視野に入れつつも、なお1年検討を深めてから決めてもいいのでは」…。委員の口からは、相次いで法的分離の「先送り論」が飛び出した。これを受け、ガス業界代表として参加した東京ガス幹部は「(法的分離を除く)改善に努めて参りたい。決意表明としてお誓いする」などと応じた。小委員会では昨年12月末までに結論を取りまとめる方針だっただけに、法的分離の導入議論は時間切れに終わるかにみえた。

 「公平な競争」を懸念

 しかし、土俵際に追い詰められた経産省は、同月25日の小委員会で粘り腰をみせた。会合には、自由化市場で事業拡大を目指す中堅ガス事業者や、電力とガスのセット販売を進めようとしている東京電力が出席。「大手ガス会社と電気会社などの新規事業者が公平な競争条件となることが重要だ」(東電)などとガス業界側に詰め寄った。先行して電力自由化を進めてきた経産省の電力システム改革小委員会の担当幹部も「電力改革の審議会で委員からは、『電力とガスは一体的に改革を進めてもらわないと困る』との懸念が表明されている」として、ガス改革の断行を求める委員の多くの発言を読み上げた。これが奏功したのか、一部委員から「経産省が法的分離が一番良いというのであれば一任したい」「ガスも電力に遅れないように自由化準備を進めるべきだ」などとの発言を引き出した。

 経産省は今月17日、自民党の経済産業部会で、導管事業の分社化義務付けや、都市ガスの小売り全面自由化の実施などを盛り込んだガス事業法改正案を示した。今後は、与党内や国会を舞台にした議論が注目される。

ランキング