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関電に官民そっぽ… 東電・新電力に惨敗、株主の自治体さえ「殿様商売的」

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関電に官民そっぽ… 東電・新電力に惨敗、株主の自治体さえ「殿様商売的」

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 関西電力に官民がそっぽを向き始めた。電力供給契約を打ち切った企業や官庁など大口顧客の件数が平成26年度には昨年12月1日時点で4263件と、過去最高だった前年度の2987件を大幅に上回った。大口の契約件数の約11万6千件からみると、まだ少数派かもしれないが、来年4月からの電気料金の値上げも申請したことで、関電離れは加速しそうだ。家庭も電力会社を選べる電力小売りの全面自由化は28年度に迫るなか、官庁の入札などでは今なお「殿様商売的な姿勢が残る」と指摘されるなど前途多難な情勢だ。

 東の刺客、侵攻

 「離脱は増えると思っている」

 東日本大震災以降、関電が2回目の電気料金値上げの準備に入ったことを表明した26年12月17日。八木誠社長は力なく話した。

 25年春に企業など大口向けで平均17・26%値上げしたこともあり、25年度の大口の契約打ち切り件数は2987件と過去最高を記録した。さらに26年度に入ってから離脱の勢いが増し、4千件を突破している。

 「電力自由化の競争時代に、まだ病院のベッドに寝たままの病人の状態」。金融関係者は関電の現状をこう表現する。そして、関電が“弱っている”間に東からの脅威が迫ってきた。

 26年12月上旬、京都府が総合庁舎など34施設の電力調達先を決めるため実施した入札結果は、電力関係者を驚かせた。落札したのは東京電力の子会社、テプコカスタマーサービス(TCS)。東電が、関西の自治体に電力を供給するのは初めてとみられる。

 TCSは26年秋以降、関西の電力関係者にとって名前が知れ渡るようになった。手始めは家電量販店。TCSは10月から、関西や中部のヤマダ電機62店舗、さらにケーズホールディングス(HD)の関西20店舗で電力供給を始めた。そして自治体へ。

 「いよいよ計画を本格的に実行に移してきたようだ」。関西の電力関係者は身構える。東電は、新総合特別事業計画(再建計画)で、首都圏以外で3年後に340億円、10年後に1700億円の売上高を目指す方針を打ち出した。

 首都圏に次ぐ市場規模の関西は、売上拡大に不可欠な市場で今後も攻勢は強まりそうだ。

 株主すら続々と離れ

 自治体の離反も痛手だ。兵庫県は26年度、県有施設の76%で、電力調達先が関電から新電力(特定規模電気事業者)に切り替わっている。入札で関電が負け続けたためだ。前年度に84%あった関電の「シェア」は、わずか1年間で24%にまで低下した。関電から購入するより約1億2千万円のコスト減になるという。

 関電の株主でもある兵庫県だが、税金を使っている以上、事務経費の削減努力は「つきあい」よりも優先する。担当者は「関電は入札への姿勢も乗り気ではなかった。殿様商売的なところがあったのかも」と手厳しい。

 TCSが落札した京都府の入札では、関電は入札自体への参加を見送った。「入札の結果、現在の関電の顧客よりも安い価格で販売をすることになるのは避けたい。だから参加しない-ということのようだった」(京都府)という。

 また、大阪府が今秋に実施した62施設の電力調達の入札は、すべて新電力が落札した。府によると、27年度は保有施設のうちの63%が新電力と契約することになる。新電力との契約比率は過去最高だ。

 大阪府・市などは昨年、電気料金の高騰に悩む中小企業などに対し、新電力を紹介する協議会を設立。新電力のメリットを訴える。関電の株主たる自治体が“脱関電”を勧める異例の試みだ。26年12月に行ったセミナーは、ほぼ満席の盛況だった。

 大阪市は関電の筆頭株主としても知られるが、担当者は「競争が起きることで消費者にメリットが出るはず。これまで競争がなかったことがおかしい」と意に介さない。

 再値上げ、東電と明暗

 くしくも関電が再値上げを表明した昨年12月17日。東電も会見を開いたが、電気料金の再値上げは1年間は行わない方針を示した。大幅値上げによる需要の損失を考慮した結果という。値上げする関電と差別化できるため、関西での販売攻勢をかけるとみられる。

 東電の再値上げ回避について、八木社長は「今は東電より安いが、今後拮抗していくと思う」と価格面での競争力低下を認める。再値上げ後の関電のモデル料金は、東電を上回り沖縄を除く全国9電力で最も高くなる可能性もあるからだ。

 「顧客の離脱が多いことに危機感はある。何とかしたいが…」と関電幹部は苦渋の表情をみせるが、27年3月期まで4年連続の赤字が確実となっているなか、打つ手なしの状況だ。

 近畿経済産業局によると関西での新電力の割合は26年7月に過去最高となる6・7%まで上昇。再値上げとなると、さらに増加が見込まれる。

 東からの刺客、もともと協調関係にあった自治体の離反。ぐらついた足元を立て直す間に、28年4月には電力小売りの全面自由化がやってくる。家庭も電力会社を選べる大競争時代の到来。関電に残された時間は少ない。

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