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原発争点回避、着地点みえず 数値目標 経産、環境省せめぎ合い

ニュースカテゴリ:政策・市況の国内

原発争点回避、着地点みえず 数値目標 経産、環境省せめぎ合い

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 エネルギーミックス(電源構成比)と、温室効果ガスの削減目標を策定する有識者会議が、具体的な数値の検討に入れないまま、会合を重ねている。最大の論点となる原発について、政治争点化を避けたい政府の意向から、本格的な議論に踏み込めないためだ。水面下では経産省と環境省のせめぎ合いもあり、議論の着地点はみえない。

 2030年の発電方法(電源)ごとの電力比率を示す電源構成比の有識者会議は、1月から本会議を5回、関連する作業部会を3回開いた。

 30日の会合では、発電コストが安く、安定して発電できる「ベースロード電源」について議論。経産省は、同電源の比率が高いほど電力料金が安くなるとの海外のデータを紹介し、6割以上に高める重要性を示した。

 同電源を6割超とする場合、東日本大震災前に電力の約3割を占めた原発の積極活用が不可欠だ。だが、これまでの会議では、原発などで具体的な比率を示した議論には至っていない。4月の統一地方選挙を控え、政府・与党は反発を招きかねない原発の争点化を避けたい。「原発の本格的な議論は後回し」(委員)となっているのが実情だ。

 11~12月の国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)に向け、日本は温室効果ガスの削減目標(約束草案)を、6月の主要7カ国首脳会議(G7サミット)までに決めたい考えだ。削減目標は電源構成比を下地にして決まる。高い削減目標を示そうとすれば、温室効果ガスを出さない原発か再生可能エネルギーの比率が鍵になる。

 再生エネをめぐっては、経産省が電源構成比の会合で、規制緩和などの政策による導入支援で、30年に再生エネ比率が約2割に高まる可能性を示した。一方、環境省は自民党の部会で、約3割に相当する約3000億キロワット時に達するとの試算を提示。再生エネを増やし、温室効果ガスの削減率を高めたい意向をにじませた。

 国際的に遜色のない温室効果ガス削減目標を示すうえで、原発を活用したい経産省と、再生エネを増やしたい環境省の思惑の違いは明らかだ。委員からは「今後、具体的な数値を示したうえでの議論ができる期間は、地方選後のわずかな期間に限られる」と危惧する声も上がっている。議論が紛糾すれば、6月のサミットまでに温室効果ガスの削減目標が策定できなくなる懸念もぬぐいきれない。(塩原永久)

 ■日本の地球温暖化対策に向けた日程

 5月中にも

  エネルギーミックス(電源構成比)の策定。2030年の原発や再生可能エネルギーの比率を決定

 同上

  電源構成比を踏まえ、日本の温室効果ガスの削減目標(約束草案)を策定

 6月7、8日

  ドイツでのG7サミット(主要7カ国首脳会議)で、日本の約束草案を公表へ

 11月末~12月上旬

  パリで国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)。新たな国際的枠組みを合意へ

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