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経済
渋滞解消「切り札」は自転車 フォード、電動折りたたみ式開発 自己矛盾に冷笑も
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米フォード・モーターがスペイン・カタルーニャ自治州バルセロナで開かれた携帯端末の見本市モバイル・ワールド・コングレスに出展した電動自転車「イー・バイク」のデモンストレーション=2015年3月4日(AP) 米自動車大手フォード・モーターが、都市部で深刻化する交通渋滞を解消する切り札として、折りたたみ式電動自転車を開発し話題になっている。自動車に積んだり、電車に持ち込んだりして通勤に使うことを提案。さらに自動車のスペアタイヤや座席などをフレームに取り付けて組み立てる“変身自転車”の特許も申請した。自動車と自転車を組み合わせた新しい交通システムの普及を目指すという。
ただ、渋滞や大気汚染の原因を作っている自動車メーカーが、環境にやさしい自転車の利用を推奨するという自己矛盾に冷ややかな声もある。
フォードは、スペイン・バルセロナで5日まで開かれていた世界最大級の携帯端末見本市「モバイル・ワールド・コングレス」で、折りたたみ式電動自転車「MoDe(モード)」の試作品を公開した。
英BBC放送(電子版)などによると、200ワットの電動モーターを搭載し最高時速は25キロ。運転者が疲れない心拍数を維持する補助機能を備えた電動ペダルや、後方の自動車の追い越しなどを探知し振動で知らせてくれる超音波センサーを装備している。
専用アプリをダウンロードした米アップルの「iPhone(アイフォーン)6」を取り付け、ナビゲーションとして利用できる。道案内のほか、走行中の運転者に道路の危険情報や最寄りの駐輪場の料金といった情報も提供できるという。
フォードで先進技術研究部門を担当するケン・ワシントン副社長はBBCに対し、「都市部の移動で最も必要なのは自動車、バス、電車、電動自転車といったあらゆる交通手段をシームレスにつなぎ、その時々の交通状況に対応できるようにすることである」と語り、交通渋滞解消に威力を発揮するとの期待を示した。
車のトランクだけでなく、電車やバスに持ち込めるほどコンパクトになるため、フォードでは、まず自宅から車でターミナル駅まで行き、電車に自転車を持ち込み、最寄り駅から自転車に乗って職場に行くといった通勤スタイルを想定している。
さらにフォードは、この試作品よりも画期的な組み立て式電動自転車の開発をもくろんでいるようだ。英紙デーリー・メール(電子版)などによると、フォードが申請した特許は、自動車のスペアタイヤが2つに分かれて自転車の前輪と後輪になり、ジャッキはペダルに、座席のヘッドレストがサドルになり、フレームに取り付けると自転車に変身する仕組み。この自転車を人気車種に装備する計画だという。
フォードは申請文書で「都市部の移動手段はこれ以上増やすことができず、道路網や道路幅を拡張しても、通勤者は駐車場探しや大気汚染に悩まされる」と指摘し、新たな交通システムの必要性を訴えた。
ただ、そもそも渋滞や大気汚染は自動車に原因があるうえ、フォードなどの米メーカーは最近のガソリン安を受け、エコカーより大型・大排気量の車の開発に注力するなど、“先祖返り”も指摘されている。
米紙ウォールストリート・ジャーナルは、自転車関連の特許出願について、皮肉交じりにこう伝えた。
「フォードは将来の交通問題への対処に取り組んでいたが、結局それは自転車に乗るという単純極まりないものになった」(SANKEI EXPRESS)