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【消費税1年】(下)「すべての税目で稼ぐ」政府、足元の痛みより財政健全化

ニュースカテゴリ:政策・市況の国内

【消費税1年】(下)「すべての税目で稼ぐ」政府、足元の痛みより財政健全化

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税収の内訳と推移  「消費税増税は、日本の成長にあまり良い結果を生んでいない」

 「この方向で良いのか確信できない」

 8%への消費税増税から10カ月ほどたった今年1月末。来日した仏経済学者のトマ・ピケティ氏が言い放ったのは、増税への懐疑的なコメントだった。

 世界的なベストセラー「21世紀の資本」で、各国の膨大なデータを分析して“格差の拡大”を指摘したピケティ氏。格差縮小のために資産に対する課税を強化すべきとの立場から、日本の消費税についても「(若者も含めて)低所得者にも課税される」と、その“問題点”を指摘する。

 その消費税増税から1年が経過した。実際の値上げもさることながら、増税で苦しいと感じてしまう「痛税感」がマインドを冷え込ませているとの指摘も根強い。だが、政府の目線は足元の増税の痛みより、さらに先を見据えている。

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 所得税=約3割▽消費税=約3割▽法人税=約2割。これが、現在の日本の税収の基本的構造だといわれる。このうち、所得税と法人税は景気変動に左右されやすく、リーマンショック後に所得税は2年間で2割、法人税は5割以上落ち込んだ。一方で、消費税は税率3%時に5兆~6兆円、5%時には10兆円前後で安定する。ピケティ氏には不評だったが、景気や人口構造の変化に影響されにくく、働く世代などに負担が集中することがないという“利点”もある。

 実際、消費税率が8%に引き上げられた結果、平成26年度の税収は、国内総生産(GDP)の伸び悩みなどで所得税が15・8兆円、法人税が10・5兆円とほぼ横ばいだったにもかかわらず、消費税は4割以上の上積みとなり、税収総額のプラスに大きく寄与した。27年度には所得税を超える最大税目になる見通しだ。

 こうした中、政府は税制の抜本的な見直しを急いでいる。国の財政は1千兆円超の借金を抱え、今や世界最悪の水準で「すべての税目で税収を稼ぐようにしなければならない」(財務省)ためだ。

 加えて、少子高齢化による人口構造の変化が影を落とす。厚生労働省の推計によると65歳以上の高齢者の人口は24年の3058万人から、37年には3657万人に拡大する。

 給与を主な課税対象にした今の所得課税では資産はあるが収入のない高齢者には課税しにくい。その結果、働く世代に負担が集中する。これが、現在の税制が抱える構造的な課題だ。解決策として、消費に課税する税=消費税がますます重視されている。

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 消費税以外にも、硬直した税体系を変える動きが活発になってきた。

 たとえば、法人税では27年度税制改正大綱で外形標準課税の税率上げや繰越欠損金控除の見直しで赤字企業への課税を強化。一方、法人実効税率は数年間で20%台まで引き下げ、企業の競争力強化を促す。女性の社会進出を阻害しているとの指摘がある配偶者控除の見直しを含めた所得税改革も、今年から本格的な議論が始まる見通しだ。

 課題も少なくない。消費税中心の新たな税体系を進めるには、増税のたびに景気に与えるマイナス効果の緩和策が必要になるが、まだ“処方箋”はみえない。

 政府・与党は生活必需品の消費税率を低く抑える「軽減税率」や、低所得者には所得税の税額控除を行い、控除する税金がない場合は現金の給付を行う「給付付き税額控除」の導入を検討する。ただ、「効果や制度づくりなどに両方とも問題がある」(財務省幹部)ため、導入をめぐって与党内に温度差がある。

 再増税まで残り2年、政府は成長と財政健全化を両立させる難しい方程式を解き続けることになる。

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 この連載は佐久間修志、小川真由美、万福博之、松岡朋枝が担当しました。

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