ニュースカテゴリ:政策・市況
国内
消費税増税の恐るべき破壊力 アベノミクス蘇生に財政政策を打ち出すべき!
更新
4月の消費税増税は景気回復基調を腰折れさせたばかりか、デフレを再燃させつつある。再増税は先送りされたが、それでアベノミクスが復調するわけではない。異次元緩和追加策という国内金融政策が決め手になるとは限らないところにも不安が残る。所得税減税など増税の影響を相殺する財政政策を打ち出すべきだ。
内閣府が2014年11月17日に発表した7~9月期のGDP(国内総生産)速報値によると、実質成長率は前期比年率換算で2四半期続けてマイナス成長に落ち込んだ。 消費税増税前の駆け込み消費需要からの反動減が収まって、V字型の回復を見込んでいた大方のエコノミストや大手新聞などメディア多数の予想が完全にはずれた。消費税増税は景気回復基調を腰折れさせたばかりか、デフレを再燃させつつある。
安倍首相はその翌日、2015年10月に予定されていた消費税率10%への引き上げ実施を先送りしたうえで、衆議院解散・総選挙に踏み切る意向を表明した。アベノミクスが増税のために瀕死の状態に追い込まれたことから、再増税見送りは当然だが、まず必要なのは消費税増税の恐るべき破壊力への認識だ。
甘利経済財政・再生相はGDP速報値発表後の記者会見で、「デフレ下で消費税増税を行なうことの影響について学べた」「デフレマインドが払拭しきれない中で、消費税を引き上げるのはかなり影響が大きい」と反省の弁を述べたが、そんなことは1997年4月の橋本政権当時の消費税増税後のデフレ不況を見ればわかる。甘利氏周辺の内閣府エコノミストたちからは楽観論ばかり吹き込まれたのだろう。本連載などで、「消費税増税でアベノミクスは殺される」と1年半以上前から警告してきた筆者からすれば、彼らエリートエコノミスト、エリート官僚たちが権力と納税者のカネを使って収集した豊富な情報をいったいどのように歪わい曲きょくしたのか、知りたいところだ。
問題は、再増税を先送りしたところで、アベノミクスが復調するわけではない点だ。
即効性が期待されるのが金融緩和である。黒田日銀総裁は10月末に思い切った「異次元緩和」追加策を打ち出し、円安、株高を演出した。円安は株高を導き、株高は実体経済を押し上げるという読みがある。
日銀マンは伝統的に金融政策を通じて株高に誘導するのは「タブー」で口にしたがらなかったのだが、黒田日銀は株式のインデックス投信を信託銀行全体の規模並みで買い上げるくらいなのだから、ずいぶんと変わったものだ。では、金融緩和でどれだけ株価は上がるのか。そして、株高で実体経済はどのくらい押し上げられるのか。
上のグラフは、マネタリーベースの増加率100に対して株価がどのくらい上昇してきたかを日米比較したもの。米国は2008年9月のリーマン・ショックを、日本は安倍政権が発足した2012年12月を基準とし、アベノミクスが定着する一方で米国の量的緩和が最終段階に入った2013年8月からをクローズアップした。日本の場合は2014年春以降60前後で推移している。米国は15前後で推移してきたが、基調は上向きで、10月末の量的緩和打ち切り後も株価に悪影響は出ていない。
下のグラフは、株価変動幅100に対して実質GDPがどのくらい変動したかを追ったもの。株高によるGDP押し上げ効果は日本の場合、米国に比べてかなり弱い。株価が2倍になった場合、米国では2011年9月以降、一貫して実質GDPが15%前後増えているが、日本では2012年12月以降は5%前後で、消費税増税を経た7月以降は2%台まで落ち込んだ。ただし、米国モデルほど華々しくなくても、金融緩和、株高、景気押し上げというアベノミクスの効果は日本でもそれなりに成果を上げているように見える。 株価押し上げをもくろむ金融政策自体、非常手段であり、期間、規模ともに限度がある。しかも、日本の株価はウォール街の投資ファンドの思惑次第で大きく変動するので、株価は一本調子で上昇するわけではない。
異次元緩和追加策という国内金融政策が決め手になるとは限らないところに不安が残る。金融頼みではかなり危うい。アベノミクス蘇生のためには所得税減税など、増税の影響を相殺する財政政策を打ち出すべきだ。(ネットマネー)