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日本特有の「株主優待」 コレって本当に投資家思いの制度なの?
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今年からNISA(少額投資非課税制度)がスタートしたこともあり、投資初心者が株式市場に参入。あらためて、上場企業の株主還元姿勢が注目されています。
その流れを受けて、自社製品などを提供する株主優待制度を実施する企業も増加。一部報道では、7月末時点の導入社数は過去最高の1148社にのぼるとのことです。
実は株主優待は日本特有の制度。米国ではスターバックスコーヒーなど、一部の企業しか導入していません。そして、この株主優待は海外の機関投資家からは好まれていない制度なのです。株主優待は海外にまで送付されないのと、換金の手間がかかるからです。
しかし最大の理由は、株主優待の導入が利益率悪化を招く可能性があることです。株主優待のために捻出されるお金は、損金参入されない交際費(=節税効果がきわめて薄い費用)として計上される、ただのコストとなります。
たとえば、株主優待が1万円で、売上高粗利率が10%の企業を想定します。株主優待導入のために発生したコストの元を取るためには、別に10万円の売り上げを確保する必要があります。
利益率が1%なら、追加的に100万円の売り上げが必要になるのです。なお、ここでいう「元を取る」とは、コストを吸収しただけで利益ではありません。
本当の株主還元とは、利益率の改善を高め、企業価値を向上し、長期的な株価上昇を株主に提供することではないでしょうか。なお、ファーストリテイリングやセブン&アイ・ホールディングスといった超優良企業では、企業価値を損なうような株主優待は導入していません。一方で、導入しているからといって、それにより株価上昇が続いているという企業も聞きません。
ただ、短期的には株価に好影響があるようです。神戸大学の砂川伸幸教授の実証分析によると、株主優待を新たに実施した企業の株価は、導入後数カ月間はそれをきっかけに上昇しやすいそうです。株主優待導入で注目度が増し、流動性が向上。結果、株価の上昇につながるようです。
しかし、短期的に株価が上昇しやすくても、上記の理由から長期では未知数です。本当に自分を優待してくれるのは、好業績を出し続ける体質の企業なのか、それとも株主優待を送り続けてくれる企業なのか、再考してみるのも悪くないかもしれません。(ネットマネー)