イスラエルに急接近する中国経済界の思惑 ケタ違いの投資を進める理由とは
配信元:PRESIDENT Online 更新マタンは大使時代、習政権の一帯一路政策に積極的に支持を表明したり、中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)に創設メンバー国として参加するにあたって大いに協力したりと、非常に中国と親しい動きを見せてきた。
マタンは今年11月に初の著書を中国国内で刊行(なお、ヘブライ語や英語版はなく中国語翻訳版のみの刊行)し、それが中国の体制側メディアでも大々的に報じられていることから、中国国家にとっても非常に都合のいい親中派外国人としてみなされているようだ。
ほかにも今年10月の共産党大会の前には、イスラエルの著名投資家アミール・ギャル・オアが中国国際放送局(CRI)のプロパガンダ映像に登場して、中国政府を賛美。また11月には中国とイスラエルの合作のもとで制作された『メイド・イン・チャイナ』という全5回のドキュメンタリー映像が、イスラエル放送局(IBA)を通じて同国内で全国放送されている。
パレスチナ問題には目をつむるように
こうした近年の両国の接近を背景として、今年4月にイスラエルは中国人労働者6000人の受け入れについて中国側の同意を得ることになった。従来、中国はパレスチナ問題においてイスラエルに対して批判的な立場で、パレスチナ自治区のユダヤ人入植地拡大に中国人労働者が利用されることを警戒して同様の決定をしばしば先送りしてきたのだが、イスラエルとの関係強化を通じて事実上は問題に目をつむるようになった形だ。
中国から見たイスラエルは、中国人がやや苦手とする「ゼロからイチ」、つまり無から有を生み出す革新的なイノベーションを売ってくれる、非常にありがたい相手。一方でイスラエルにとっても、地理的に遠く離れた中国は国防上の脅威になる相手ではないため何を売っても安心であり、とにかくカネをたくさん支払ってくれる上客として歓迎されている。
今年11月のトランプ大統領訪中を通じて、中国側はトランプ氏に習近平政権が主張する新型大国間関係(米中G2)の枠組みを認識させることに事実上成功した。従来、アメリカと特別な関係を持ち続けてきたイスラエルに対しても、経済を軸に非常に大きなプレゼンスを発揮しつつある。
イノベーションによって変わる世界と、中国によって変わる世界。ふたつの大きな変化のキーとなるイスラエルの動向は、今後も極めて重要だ。
安田 峰俊(やすだ・みねとし)
ルポライター、多摩大学経営情報学部非常勤講師
1982年滋賀県生まれ。立命館大学文学部卒業後、広島大学大学院文学研究科修了。在学中、中国広東省の深セン大学に交換留学。一般企業勤務を経た後、著述業に。アジア、特に中華圏の社会・政治・文化事情について、雑誌記事や書籍の執筆を行っている。近著に鴻海の創業者・郭台銘(テリー・ゴウ)の評伝『野心 郭台銘伝』(プレジデント社)がある。
(ルポライター、多摩大学経営情報学部非常勤講師 安田 峰俊)





