「イオンを創った女」は「3年後」を基準に人事を取り仕切っていた (3/5ページ)

(撮影=プレジデント社書籍編集部)
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 今日の管理限界とは管理と管理のはざま(空白地帯)とも言える。時間・距離・国・習慣・宗教・人種・広さ・特殊な知識・特殊な技術・文化・歴史・言語などなど、ますます国際化、多様性が進んだ会社組織では、こういった空白地帯を前提にしないといわゆる「壁」ができ、管理不能要因となる。

 「人事は掃除屋でもある」

 また、過度なトップダウン、極度のコストカット、特殊な部署、過度な分業、長いベテラン担当者や過度の異動、従業員のモラル低下、士気低下なども広義の管理不能要因となりうる。そこには縦横なコミュニケーションがなく、腐敗・不正・事なかれ主義の温床となる。

 その結果、組織生命が絶たれるような事件がおきることは昨今の企業不祥事をみてもわかることである。組織編制にはそのことをあらかじめ予見して、牽制制度(チェック機能)を組み込んでおく必要がある。もしくは、監査機能の強化を行う。

 小嶋は、清潔を望む心、腐敗を忌み嫌う心を大切にしたいという。

 「人事は掃除屋でもある」という。

 この言葉は組織や人間の負の部分を知り尽くした者しか言えない言葉である。「光と陰のいずれの部分に対しても、方針を明らかにし、具体的な運用をすることで企業の良き風土がつくられるのである」

 新入社員教育で「就業規則」を読む理由

 では、組織としての行動規範はどう教えるべきか。

 ジャスコでは就業規則を組織運営のツールとして使っていた。そう言うと一様に驚かれる。「就業規則というと労働基準法で定められたあのことですか?」というようにである。それも新入社員教育の教材として全員に配布するのである。

 「私は就業規則を労基法の絶対記載事項だけではなく、むしろ組織運用の一環として捉えている。したがって新入社員教育にはこの就業規則教育が重要と考えている」

 なぜなら、就業規則は会社と従業員との契約である。したがって組織人としての行動規範、すべきこと、してはならないこと、心がけなければならない約束事がここにある。だから新入社員教育の際に就業規則を徹底して学び、この遵守を社員に求めるのである。

 例えば、命令系統の統一というような項目がある。そこには、「あなたを命令する人はただ一人であり、他人からの命令や指示は、助言提案と理解しなさい」とある。

従業員を動かすための「ハード」