「イオンを創った女」は「3年後」を基準に人事を取り仕切っていた (4/5ページ)

(撮影=プレジデント社書籍編集部)
(撮影=プレジデント社書籍編集部)【拡大】

 これは従業員を動かすための「ハード」である。そして、この「ハード」を知ることで、個人の行動を規制誘導すること、即ち「ソフト」を動かすことができるのである。

 従業員の意識を変えるなら「ルール」を変えればよい

 「企業の社会的意義とか倫理といった抽象的なものでも、これをきちんと行動レベルで実現していくには、それに関わる制度を確立しなくてはならない。制度として具体的な方法を明示し、手続きとルールが明文化されて初めて行動に結びつくのである」

 組織運営上には、数々の制度やルールが存在し、会社の風土を醸成している。業界には業界としての暗黙のルールもあり、会社にはその会社の独自のルールが存在する。この制度やルールが、従業員の意識や行動をつくっていくのであるが、それが明文化されていなければ、行動には結びつかない。

 一方で、従業員の意識や行動を変えたいなら、制度やルールを変え、明文化し、それを教え、遵守させればよいということだ。

 制度やルールは保守的順守的性格を有しながら、時に応じて変えていく必要がある。でないと時代遅れになり、ルールは守りましたが、会社はダメになりましたということになる。

 この保守と革新の要素を合わせもつ巧妙な設計が必要なのである。変化を予見して先手を打っていく。組織が有効に機能するためには、後追いの法律とは全く異なった手法の厳しさが必要なのである。

 優秀な上司が陥る“マネジメントの罠”

 かつてこんなことがあった。

 合併した後に人事交流で旧オカダヤ地域に来た、他の会社出身の人事部長がいた。優れた人物だったが、反発が起こり、人事業務の滞ることがしばしばあった

 その人事部長は悩んだ末に、「私のどこがいけないんでしょう?」と、部下である私にその原因を尋ねてきた。

 私はこのように答えた。

「あなたの出す指示書は細かすぎる」