社会・その他

就労ビザや大卒学歴もお金で 外国留学生急増の裏で進む“偽装就職”の闇 (4/4ページ)

 日系ブラジル人の多くが就いていた工場での派遣労働は、日本語が不自由でも十分にこなせたからだ。また、ブラジル人コミュニティで暮らしていれば、普段の生活も日本語は必要なかった。日本語なしで生活できるという点で、現在の偽装留学生とも極めて似通った環境である。

 日系人には日本での定住、永住の道が開かれている。そこにリーマンショックが起き、失業者が急増した。彼らには職業選択の自由もあったが、日本語が不自由なため、肉体労働以外では仕事が見つけにくい。そんな日系人たちの失業が長引けば、行政が負担する社会保障費は増え、治安の悪化も懸念された。

 そこで日本政府は「帰国支援金」の制度を設け、日系人たちに帰国費用を渡し、母国へと送り返そうと努めた。制度に対しては、海外からも批判が相次いだ。政府のやり方が、外国人の「使い捨て」と受け取られたのだ。

 政策もなく、なし崩しに進む移民の受け入れ

 今後、リーマンショックのような状況が再び起きることもあり得る。そのとき政府は、日本で就職した留学生、そして改正入管法のもと来日する外国人たちも、都合よく母国へと追い返すのだろうか。

 政府は「移民政策は取らない」と言うだけだ。その陰で、実質的な移民が増え続けている。「政策」もなく、なし崩しの受け入れが加速していく一方だ。それはまさに欧州諸国が50年前に移民の受け入れで辿り、後に苦い経験をすることになった道である。

 経済界が低賃金・重労働を担う外国人を求めるのは当然だ。それが留学生であろうと、また移民であろうと企業にとっては変わらない。しかし政府には、受け入れに伴う負の側面まで検証し、長期的な視点で政策を立案する役目がある。にもかかわらず、現状は目先の「人手不足」が言い訳となって、様々なかたちで労働力確保の“抜け道”ばかりが増えている。

 とりわけ留学生に対する就職緩和策は、移民の受け入れという点で重大な意味を持つ。それなのに政府は、国民の目をごまかそうとしかしていない。そして新聞など大手メディアは検証機能を全く果たせていない。そんな現状のもと、この国のかたちが大きく変わり始めている。(ジャーナリスト 出井 康博 写真=時事通信フォト)

 出井 康博(いでい・やすひろ)

 ジャーナリスト

 1965年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。英字紙日経ウィークリー記者などを経てフリー。著書に、『ルポ ニッポン絶望工場』(懇談社+α新書)、『長寿大国の虚構-外国人介護士の現場を追う-』(新潮社)、『松下政経塾とは何か』(新潮新書)などがある。(PRESIDENT Online)

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