働き方

「定時に帰る」で社長になった人の共通点 残業せず出世する人の仕事の仕方 (3/3ページ)

周りにどう思われても定時に帰るという信念を貫いた

 もう1人、東レの取締役を経て東レ経営研究所の社長を務めた佐々木常夫さんも、課長になってから家庭の事情で定時退社を実行した。佐々木さんはこう話していた。

 「上の人は結果さえ出してくれればどうでもいいのです。長時間仕事をやっている人を評価するというのはウソです。私が課長になったときに部長に『私はこういうやり方で残業を減らします。結果を残します』と宣言しました。上に結果を出すので残業しませんと言えば、仮に自分がヒマであっても仕事を与えようとすることもありませんし、実際、仕事も増えません。やはり上とのコミュニケーションをちゃんととっておくことも大事です」

 その後、佐々木さんは見事に残業を減らし、課の生産性も上げた。上司も驚いたらしい。それでも当時の東レでは残業しない課として浮いていたらしい。佐々木さんは「残業しない変わったやつがいるなと思われていましたし、東レのマイノリティと呼ばれていました」と語る。

 佐伯さんと佐々木さんに共通するのは成果を出すことと、周りにどう思われても定時に帰るという信念を貫いたことだ。そして、変わり者のレッテルを貼られても出世を果たした。

「パワーポイントに5時間もかけるのはムダ」

 では、定時に帰る仕事術とはどんなものか。佐々木さんはこう語る。

 「ちゃんと考えて工夫することをしないで、与えられた仕事を惰性でそのまま(1から順番に)やっているから時間が長くなるのです。ちゃんと考えて、この仕事はやるべき仕事なのか、やらないでもよい仕事なのか、またどのぐらい時間をかけてやる仕事なのかを決めてからとりかかることです。どんな仕事でも全部やるから長くなってしまう。タイムマネジメントの要諦はいかに仕事を切るか、どの仕事を捨てるかです。たとえば手書きでやれば早く書けるのに、パワーポイントでやろうと思って5時間もかけたりする。ムダなことをやっているのです」

 佐伯さんも筆者に取材に似たような発言をしていた。

 「周囲を見ていて一番気になったのはムダな仕事をいっぱいしているなと思ったこと。会議があれば長文の議事録を作るとか。議事録は半ページでもいいのです。仕事のプロセスにムダな時間を割くよりも、どういう成果を上げるかを考えて仕事に取り組むことです」

 言われて見れば当たり前のことかもしれないが、日々惰性で仕事をしている人にとっては、つい見落としがちになる重要な指摘だ。

 周囲の誰にもよい顔をされようと丁寧にやるだけが仕事ではない。定時に帰るには今日やるべきこと、翌日でもやれることなど、仕事の軽重を自分の頭の中で考え、メリハリをつけて仕事をすることが重要なのだ。

 (ジャーナリスト 溝上 憲文 写真=宇佐美雅浩)(PRESIDENT Online)

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