社会・その他

ひきこもり「1人で死んで」論争で考えた 殺傷事件を機に議論すべきこと (1/3ページ)

 なぜ岩崎容疑者の写真は「中学生時代」だったのか

 5月28日の朝、神奈川県川崎市多摩区で私立カリタス小学校の児童ら20人が次々と殺傷された。この事件の背景を知るうえで参考になるのが、岩崎隆一容疑者(51)の写真だ。

 新聞やテレビで使われている岩崎容疑者の顔写真は、どれも中学校の卒業アルバムから接写されたものだ。なぜ、35年以上も前の顔写真が使われているのか。だれもが「現在の写真はないのか」と思うはずだ。

 新聞やテレビは事件発生直後から岩崎容疑者の顔写真を探し回ったはずだ。だが、どうしても中学生のときの写真しか見つからなかった。これは岩崎容疑者が中学校を卒業してから社会との接点をほとんど持たなかったことを示している。

 報道によれば、スマホやパソコンも持っていなかったという。一体、どんな生活を送っていたのか。これまで外の世界と関係をほとんど持たずに生きてきたのだろう。まさに「ひきこもり」である。

 具体的にどんな人生を送ってきたのか

 「8050問題」という言葉がある。80代の親が、ひきこもりの50代の子供の生活を年金などで支える問題だ。ひきこもりが社会問題として認知されはじめた1980~90年代にかけては、多くのひきこもりはまだ若かった。だが、30年という歳月がたち、当時の若者が40~50代、その親が70~80代となり、問題がより深刻になっている。8050の親子が社会的に孤立し、生活が成り立たなくなり、餓死や無理心中などに至るケースも起きている。

 岩崎容疑者の事件の背景には、この8050問題がある。

 これまでの神奈川県警の調べによると、岩崎容疑者は川崎市内の小中学校に通っていた。当時、両親が離婚し、叔父伯母の2人が岩崎容疑者の面倒をみてきた。具体的にどんな人生を送ってきたのか。不明な点は多い。10年以上も仕事に就かず、川崎市麻生区の自宅の自室からほとんど出ない引きこもりの状態だった。もちろん結婚もせず、独身だった。いっしょに暮らしていた伯父や伯母との会話もほとんどなかった。

 人は社会的動物といわれ、1人では生活はできない。それにもかかわらず、岩崎容疑者は51歳で自殺するまで孤独を貫いた。なぜなのか。

 事件直前に丸刈りにしたので、岩崎容疑者だと分からなかった

 事件直前、岩崎容疑者は突然、髪を切り、頭を丸刈りにした。犯行への強い決意の表れだったのだろう。

 身元確認で写真を見せられた同居中の伯父や伯母は、丸刈りのために岩崎容疑者だと分からなかった。このため神奈川県警は岩崎容疑者の指紋を採取し、自宅に残っていた指紋と照合するとともにDNA鑑定も実施した。身元確認は手間取り、12時間以上もかかった。

 神奈川県警が家宅捜索に入ったところ、岩崎容疑者の自室は日中でも薄暗く、漫画本やゲーム機が散らかっていた。思想性の強い書物や偏向した趣味をうかがわせるようなものはなかった。遺書もなかった。結局、押収されたのは犯行に使ったとみられる包丁の空き箱やノート、本、キャッシュカードなど計約30点だけだった。犯行時にはいていたジーンズのポケットには現金10万円が入っていた。

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