社会・その他

ひきこもり「1人で死んで」論争で考えた 殺傷事件を機に議論すべきこと (2/3ページ)

 岩崎容疑者は28日午前7時40分ごろ、カリタス小学校のスクールバスを待っていた児童らを柳刃包丁2本で襲い、その直後に自刃した。なぜ、20人もの児童らを殺傷したのか。類似事件の再発防止のためにも、犯行の動機の解明は欠かせない。

 元農水次官の長男刺殺事件の動機にも影響

 岩崎容疑の事件は波紋を広げている。

 たとえば、農林水産省の元事務次官の熊澤英昭容疑者(76)が、44歳の長男を刺して逮捕された事件だ。6月1日、東京都練馬区早宮の自宅で、熊澤容疑者は長男を包丁で刺して死亡させた。警視庁は熊澤容疑者を殺人未遂の疑いで逮捕し、3日には容疑を殺人に切り替えて検察庁に送った。

 これまでの調べによると、熊澤容疑者は「長男は引きこもりがちで、家庭内暴力があった」と話していた。その後の調べに対し、「川崎の殺傷事件を知って自分の息子も周りに危害を加えるかもしれないと不安に思った」と供述している。

 霞が関の官庁で事務方トップの事務次官まで務め上げた人物が、わが子を殺す事件は何とも悲惨である。これまで報じられた供述によれば、岩崎容疑者の事件が引き金を引いたことになる。

 ネットでは「ひきこもりは悲惨な事件を引き起こす」「ひきこもりの人間は犯罪予備軍だ」という非難の声も聞こえるが、そう考えることに沙鴎一歩は反対である。

 1人で死ねば、すべての問題は解決するのか

 ひきこもっている人は、決して凶悪な犯罪者ではない。ひきこもりを偏見視することは、彼らをさらに社会から隔絶することになる。その行き着く先は自殺だろう。それでいいはずがない。

 岩崎容疑者に対し、テレビの情報番組で「小学生を巻き込まずに1人で死ねばいい」との趣旨の発言をする著名人が目立つ。

 報道によれば、ニュースキャスターの安藤優子氏は事件発生直後の5月28日、フジテレビ「直撃LIVE グッディ!」で「自分1人で自分の命を絶てば済むことだ」と発言した。これにコメンテーターで弁護士の北村晴男氏が「死にたいなら1人で死ねよ、と言いたくなる」と応えた。

 同じ28日、TBS「ひるおび!」では、落語家の立川志らく氏が「死にたいなら1人で死んでくれよ」と話した。

 こうした非難の声がテレビ番組から発信され、ネット上でも拡散していった。

 悩んでいる人を、さらに苦しませるだけ

 これに反論したのが、貧困者を支援するNPO「ほっとプラス」の代表理事の藤田孝典氏だった。藤田氏はYahoo!ニュース(個人)で「川崎殺傷事件『死にたいなら一人で死ぬべき』という非難は控えてほしい」と呼びかけた。この藤田氏の反論は、ネット上だけでなく、テレビの情報番組でも取り上げられ、大きな話題になった。

 沙鴎一歩は藤田氏の考え方に賛成である。テレビでコメントする場合、出演者は冷静かつ慎重になるべきだ。「1人で死ねばいい」という感情的な思考は、あまりにも単純だ。

 「1人で死ねばいい」という発言が繰り返されることは、ひきこもりなどで悩んでいる人を、さらに苦しませるだけだろう。

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