働き方

相手を怒らせたらどうすればいいか 「不快にさせ、お詫び」は有効な謝罪だった (1/3ページ)

 交渉中に険悪になり、相手を怒らせたらどうすればいいか。ミュンヘン・ビジネススクールのジャック・ナシャー教授は「相手の意見に同調し、時には利用する。例えばデザイナーのポール・スミス氏は議論が紛糾すると、おもちゃを見せて場を和ませている」という--。

 ※本稿は、ジャック・ナシャー『望み通りの返事を引き出すドイツ式交渉術』(早川書房)の一部を再編集したものです。

 怒った相手に反撃しても勝ち目はうすい

 業務上のミスで、取引先を怒らせてしまった。相手は、あなたの非を責めつづけている。どのように対処するのがよいだろう?

 相手があなたを攻撃するとしたら、その対象となるのはあなたの論理かあなた個人かのどちらかだろう。攻撃されれば私たちはつい反論したくなる。

 だが反撃が功を奏することは滅多にない。反論された相手は、態度を一層硬化させてしまう場合がほとんどだからだ。それにもしその小競り合いに勝てたとしても、結局はあなたの負けだ。そのころには相手との関係は、もう修復不可能なほどのダメージを受けてしまっているからだ。自分に屈辱を味わわせた相手の顔を、誰がまた見たいと思うだろう? ほかの人の前で屈辱を味わわされたのならなおさらだ。

 相手から攻撃されたときには、あなた個人への攻撃を、あなたが非難を受ける原因となった問題自体への攻撃にすりかえられるような、新しい解釈を付け加えるといい。

 たとえばこんな感じだ。「あなたは私が家族を全然かえりみないと言いますが、私だって自分の一番身近な人たちと十分な時間を過ごせていないことを申し訳なく思ってるんです。これからはしょっちゅう出張に出なくてもすむプロジェクトだけにかかわれるよう、最大限努力するつもりですよ」

 10数えても怒りがおさまらないなら100まで数える

 ニュートンの法則では、作用には必ず反作用が伴うと結論づけられているが、この法則が当てはまるのは物理の世界だけだ。人とのコミュニケーションにおいては、私たちは相手にどう反応するかを自分で選びとることができる。

 ひどく腹をたてているときは、相手の言葉に反応しないほうがいい。そんなときに口を開いても、ろくなことにならないからだ。怒りを感じているときは血液が脳から足やこぶしに一気に送られ、あなたの判断力は正常に機能していない。怒りの感情というのは、ヘラクレスのヒドラ退治のようなものだ。頭をひとつ切り落とすたびにふたつ新しい頭が生えてくる。少し時間をおかなければ怪物の姿はもとには戻らない。

 交渉の場で怒りを感じたときは、深呼吸をして10まで数を数えよう。それでも怒りがおさまらなければ、アメリカの大統領だったトーマス・ジェファーソンが勧めているように、100まで数えるといい。そうすればあなたの脳は、また冷静な判断ができる状態に戻るだろう。そうしているうちに、交渉相手にも冷静さが戻ってくる。相手の怒りもまた、そのころにはおさまっているはずだ。

 苦情が来たら、柔道のように相手の“力”を利用する

 交渉術のテクニックのなかでも私がもっとも難しく感じるのは、この怒りをおさめるという行為だ。

 たとえば、午前中の大半をカスタマーサービスのホットラインに電話がつながるのを待ちながら過ごし、ようやく誰かと話ができたと思ったら、「残念ながらここでは請求書の金額を修正することはできません」という答えしか返ってこないときなど、私は自分の到達目標を強烈に意識しなおさなければ落ち着きを保てない。

 そういうときは、私の目標は苦情を言うことでも電話の相手に八つ当たりをすることでもなく、相手を自分の味方につけて問題を解決することなのだと強く自分に言い聞かせ、なんとか冷静さを保つようにしている。

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