働き方

相手を怒らせたらどうすればいいか 「不快にさせ、お詫び」は有効な謝罪だった (2/3ページ)

 反対にあなたが苦情を受ける立場だった場合には、攻撃した相手は当然、あなたが自己弁護をしたり反論をしたりしてくるだろうと予測しているだろうから、あなたは相手の意表をついて、相手に同意を示せばいい。「おっしゃるとおりですね。私があなたの立場だったら同じように腹をたてると思いますよ」。そう言えば、相手は返す言葉を失うはずだ。日本の柔道家のように、相手の力を利用して技を仕掛けるのである。

 できる限り相手の意見に同意しよう。通常は、無愛想にすれば無愛想な反応が、攻撃すれば反撃が返ってくるものだが、このパターンを崩さなければあなたの目標には到達できない。

 交渉の席でポール・スミスが出したものは……

 数十年来、日本でビジネスを展開しているイギリス人デザイナーのポール・スミスは、議論が紛糾しすぎたときの彼独自の対処法について私に話してくれたことがある。

 交渉の場の雰囲気が険悪になったのを感じると、ポール・スミスはブリーフケースのなかに常備しているゴム製のにわとりを、無言でテーブルの上に置くのだそうだ。そうすると、一瞬あっけにとられた後で全員が思わず笑い出してしまうため、ネガティブな感情は払拭されて、また冷静な交渉ができる状態に戻るのだという。

 また、コールセンターやホテルの職員など、苦情受付のプロたちは、激昂している相手に対して「落ち着いてください」とは決して言わない。それよりも彼らは相手に話させ、それに耳を傾ける。すると苦情を言う側はたいてい驚く。トラブルのさなかにいて、自分はほとんど理解されていないと感じている人にとっては、予想外の対応だからだ。話をしているうちにネガティブな感情は消滅していき、徐々に苦情を言う側にも冷静さが戻ってくる。

 交渉中にネガティブな感情がわき起こったときには、相手に反論せず、常に冷静さを保つこと。そのうえで自分の感情に見合った反応をしながら相手の感情に注意を払い、全体を俯瞰できるようにしていれれば、あなたは交渉にかかわる感情に、適切に対処できるようになる。

 言い訳を述べてから謝ると信頼を失う

 では、どう謝罪をするか?

 子供は謝罪の効用を知っている。謝罪するにはある程度自制心を働かせなくてはならないとはいえ、「謝れば問題を解決できる」と親から教えられるからだ。ところが大人になると、私たちはいつの間にかそれを忘れてしまう。

 謝罪は、相手のなかにあるわだかまりを解消できる唯一の手段だ。ことの大小を問わず、謝罪を受けなければ、相手はあなたへの報復感情をもたずに冷静な会話ができるようにはならない。私はフランクフルトの地方裁判所で医療訴訟の傍聴をしていたことがあるが、訴訟のうちの大半は、医者が患者に謝罪していれば起こさずにすんだようなものばかりだった。

 心からの謝罪をすれば信頼関係をまた構築できるが、言い訳ばかりでなかなか謝罪の言葉を口にしなければ、相手からの信頼を失ってしまうだろう。「たしかに30分遅刻してきたけど、本当は時間通りについていたはずだったんだよ。乗ろうとしていた地下鉄はどういうわけか早めに発車してて、乗るはめになった次の地下鉄は遅れてたんだ」

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