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優秀な営業マンがだらだらと雑談を続けるワケ 肯定の返事を引き出そう (1/3ページ)

 交渉や商談の際、あいさつもそこそこに本題に入ろうとする人がいる。ミュンヘン・ビジネススクールのジャック・ナシャー教授は「単刀直入に話を始める人は交渉で失敗しやすい。感じのいい雑談をするだけで、相手が譲歩してくれる可能性は高くなる」と指摘する--。

 ※本稿は、ジャック・ナシャー『望み通りの返事を引き出すドイツ式交渉術』(早川書房)の一部を再編集したものです。

 映画に出てくる交渉マンなら「嫌味で冷酷」だが……

 自分の要求を容赦なく相手に突きつけ、そして狙いどおりのものを手に入れるピンストライプのスーツを着た嫌味な人物。こうした交渉担当の冷酷なビジネスマンのイメージを私たちに植えつけたのはハリウッド映画だ。

 だがそういう映画のストーリーを書く脚本家の収入は、映画業界のなかではお世辞にも多いほうとはいえない。映画にかかわるクリエイティブな仕事をしている人々のなかで、もっとも労働契約条件が悪いのは脚本家だ。つまり、脚本家は交渉が不得手なのである。皮肉なものだ。

 交渉相手とはよい関係を築いたほうが、交渉の成果は上がりやすい。その理由を知りたければ、自分自身にこう問いかけてみるといい。交渉においてあなたが寛大になれるのは、好感のもてる相手に対してだろうか? それともあまり好感のもてない相手に対してだろうか?

 関係性のよさが重要な理由はしごく単純だ。私たちは、なんの関係もない相手に対しては、よい関係を築けている相手に対してよりもずっと攻撃的になるからだ。

 脅す、侮辱する、さえぎる交渉はいつも成果が出ない

 スチュアート・ダイアモンドの交渉術コースでは、学生をいくつかのチームに分けて交渉のシミュレーションを行わせ、どのチームが高い成果を上げたかを学生自身に評価させている。

 その結果は、ほぼ毎回同じだという。交渉時の態度が悪いチームは(相手を脅す、侮辱する、相手の話をさえぎる、相手にあてこすりを言うなど)、交渉の成果も上がらない。交渉時の関係がよいチームほど、交渉の成果は高くなる。交渉相手に敬意をもって接すれば、相手に好意をもってもらえるだけでなく、相手の理解も得やすくなるからだ。好感のもてない相手の言い分に耳を傾けようとする人はいない。交渉相手に好かれるかどうかで、交渉の成果は大きく変わる。

 あなたが相手に共感できなくても、どんな極端な状況にあっても、相手との関係性が重要であることに変わりはない。人質事件が起きたときは、人質が生きている時間が一分でも長いほうが解放されるチャンスは大きくなることがわかっている。犯人と人質とのあいだに結びつきが生まれ、犯人が人質を殺すのに躊躇(ちゅうちょ)するようになるからだ。

 “単刀直入”がまったくよくないワケ

 交渉をはじめる際には、席につくなり「それでは本題に入りましょう」と言うのでなく、最初は相手の精神状態を読みとることからはじめよう。交渉相手はストレスを感じて、いらだって攻撃的になっているだろうか、それとも、上機嫌で愛想がよく、開放的な気分でいるだろうか? よく知っている相手でも、日によってまったく別人のような印象を受けることもある。

 ただし、強硬に自分の要求を押し通そうとするタイプの相手との交渉にのぞむ場合でも、あなたは友好的に、オープンな態度で相手に接したほうがいい。そうすれば、相手も強硬姿勢を強めるかわりに、あなたに対して寛容な態度を示してくれるようになる。人間はえてして、周りから求められているとおりのふるまいをしようとするものだからだ。

 友人たちが会話しているときの様子や、気の合う者同士が話しているときの様子を観察すると、彼らのふるまいがよく似ているのに気づくはずだ。ボディランゲージ、体の動きや話すときの速さ、それどころかくだけた話し方をしたり堅苦しい話し方をしたりといった話し方のスタイルまで似通っている。

 友人のように、相手のふるまいを合わせればいい

 人間は、自分と同じような気分でいる人間にもっとも感化される。腹をたてている人は同じように腹をたてている人に感化されやすく、悲しげな気分でいる人はやはり悲しげな気分でいる人に感化されやすい。そして双方が相互に感化しあうと、ふるまいは自然に似通ってくる。気の合う友人同士の話し方やしぐさが似ているのはそのためだ。

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