今から10年ほど前に再読したとき、異なった文化を知るには年数が必要だ、という部分に目がいった。今年の冬がいつもの冬よりも寒いのか暖かいのか。2年間の滞在経験で「いつも」とは言えない。
今年の再読では、ぼくがイタリアに住む前にイタリアを遠ざけていた理由が分かった。前述のように、ぼくがフランス文化に興味を抱いたのは加藤の影響が大きいのだが、(イタリアにある)合理性を超えた感情の存在について加藤はやや否定的な見方をしていると、若い頃のぼくは誤解していたのではないかと思い至った。
また、執筆当時の彼の年齢を過ぎた今、彼の饒舌な書き方をしている部分がいやに気になる。どうして、ここで饒舌になったのか、そういうことを考えていると1ページを読み進めるのに何分もかかる。
ぼくが高校生のとき『羊の歌』を読んで感動したのは、いわば「知的背伸び」ではないかと20~30代のころに思わないでもなかったが、そんな「若気の至り」ではなかったと今にして確認できたわけだ。
回想録と呼ぶか自伝と呼ぶか、それはどちらでも良いが、一人の人間の人生の記憶を繰り返し辿る面白さをしみじみと味わっている。
遅くなりましたが、今年もよろしくお願いします。
【ローカリゼーションマップ】はイタリア在住歴の長い安西洋之さんが提唱するローカリゼーションマップについて考察する連載コラムです。更新は原則金曜日(第2週は更新なし)。アーカイブはこちら。安西さんはSankeiBizで別のコラム【ミラノの創作系男子たち】も連載中です。