ビジネスパーソン大航海時代

リーダーの伴走者は「総力戦で社会課題に挑みたい」~航海(20) (3/3ページ)

小原聖誉
小原聖誉

 もう少し教えてください

 「日本と全く異なる環境での仕事や生活を通して自分自身の持つ凝り固まった観念を俯瞰して認識することが出来ました。例えばアジアに旅行をされたり生活されたことがある方はイメージがつくかもしれませんが、皆さんすごく自然体なんですよね。例えば採用面談で志望動機を聞くと“家から近いから”という理由とかが普通に出てきたりするんです(笑)。また給与条件とかも日本だといくらの年収が欲しいってキッパリと面接で言う人って少ないと思うのですが、市場感の違いはあるもののベトナムではいくら欲しいと明言することが普通です。日本人だとつい“そんなこと言ってはいけない”と思ってしまいがちじゃないですか。こういった自分自身が保持していた観念に俯瞰的に気付けるようになり、無意識の内に縛ってしまっていたことに気付くことができ、あらためて自分自身の本質に目を向ける機会が増えました」

 その後はどのような変化があったのでしょうか。

 「ベトナムの立て直しが終わり、日本に戻り再び事業にコミットしていく生活を続けていく中で、あらためて自身のwant toとゴールを設定しなおし、その上でチャレンジをしようと決めました。会社へのコミットメントも今一度創業期の頃と同等かそれ以上に当事者として関わることを決めたのです。それまでは自分自身の結果が伴わないことがあったという負い目から、自分のwant toでチャレンジするのではなく、have toでミッションをクリアしようとする姿勢が強かった部分がありました。しかしそのような状態では本当のパフォーマンスは発揮出来ない、何よりも自分自身がチャレンジを心から楽しめない、と思い、勇気を出して自身の考えや想いを他の経営陣やメンバーに対して包み隠さずぶつけていきました。そうすることでそれまでうまく歯車が噛み合っていなかった点もしっかりと噛み合い、自分自身はもちろん、周囲の状況も刻々と変化していく様子を実感しました。そういった経験を経て、自分の心の声に素直になり、真っ直ぐ自身の思い描くゴールを設定してチャレンジしていこうとあらためて決意をかためていきましたね」

 “社会家”を圧倒的に増やしていく人生へ

 コーチングに関心を持たれたのはどういう背景なのでしょうか。

 「今一度自分は何が好きなのかを見つめ直した時に、事業開発そのものはもちろんなのですが、物凄い勢いで成長し羽ばたいていくメンバーの様子を見ることが好きでした。メンバーのマネジメントを行う際には、どのような機会と環境がそのメンバーにフィットするかを常に考えてアサインをし、結果として当人のパフォーマンスが当人の想像を超えるような世界へと昇華していくプロセスを共に歩めることは私自身、非常にエキサイティングでした。無意識の内に良くやっていた、人の才能によりフォーカスを当てて開花させていきたいと考えたのが一つです。同時に『経営者の伴走者』という存在をより一般的な存在にしたいと考えたことも大きなポイントです。自分自身が経営を担っていた際に、メンターとなる方がいたことで窮地を乗り越えられた経験もあり、そういったオフィシャルな存在がもっと多くいても良いのではないかと考えたことも大きなポイントの一つです。またもう一つの大きなキッカケが、友人経営者がうつ病になって役員を退任したという話を聞いたことでした。その友人と色々な話をする中で、最前線でコミットする経営者ほど、そのチャレンジを最大化していくために伴走者もまた必要なのではないかとより一層強く考えるようになりました。目の前のことにがむしゃらになった時に、ふと本来の自分が目指したい世界を見失ってしまったりすることもあるのではないか。そんな時に今一度自分の目指したい世界やゴールを高い次元で描き直し、更に高くジャンプするための伴走者がいた方が良いのではないかと考え、コーチという仕事に行き着きました」

 そこから深堀をされていったんですね。

 「そうですね、あらためてゼロベースで自分が自分なりのアプローチで新しいチャレンジをしたいと感じた瞬間でもありました。そこでじげんを退職し、未経験の領域であったコーチングや認知科学の分野のインプットとアウトプットをこの1年間にて徹底して行いました。認知科学を学んでいく中で非常に興味深かったのが、自身のベンチャー企業での実践経験を認知科学的に綺麗に説明が出来ることです。なぜ組織として急成長を遂げられたのか、どういう理屈で私を含めた個々人の変化、成長が実現されてきたのか、その鍵は『現状の外』のゴール設定にありました。常に『初めて』常に『未経験』と言っても過言でもない創業期から拡大期を駆け抜けられたのは、まだ見ぬ理想のゴール世界の『臨場感』を高く持ち、『根拠の無い自信』を強く持って駆け抜けられたからだと考えています。気になる方は是非お問い合わせを頂きたいのですが、実践を通して試行錯誤してきたことの科学的裏付けをとりながら、同時にその再現性をより一層高めていくことが出来ると確信を深めていくことが出来ました」

 学生時代に志されていた社会課題の解決にも繋がっていくのでしょうか。

 「はい。人々の本質と可能性を最大化することでより社会に大きなインパクトを出していきたいと思っております。前職でビジネスに向き合い徹底してチャレンジをしてきたことも、元々は社会課題の解決を出来る力をつけたいという想いがあってのスタートでした。そして社会課題へのアプローチは1人だけで出来ることは限られてしまいがちです。私は、社会家、それは企業経営者やNPOの代表などをはじめとする社会に貢献するリーダー達に対して伴走を行いながら、いわば総力戦で社会を良くしていきたいと思っております」

 最後にSankeiBiz読者の方にメッセージをお願いいたします。

 「会社や上司からの指示や期待を一心に受けるビジネスパーソンとして、have toではなくwant toに生きることなんて出来るのか!?とつい考えてしまいがちだと思いますが、プロフェッショナルとして、本当に高いパフォーマンスを出していくために、本当の意味でコミットしていくためにはwant toを元にしたゴール設定が必須だと考えております。誤解を恐れずに言いますと、誤った“責任感”を纏うのではなく、責任を持つからこそ“無責任”にWant toに生きることこそがパフォーマンスを最大化すると思っております。是非読者の皆様も新しいチャレンジを目一杯楽しみ、社会を前に進めていく仲間としてご一緒できたら嬉しいです」

 海野さんありがとうございました。

1977年生まれ。1999年より、スタートアップのキャリアをスタート。その後モバイルコンテンツコンサル会社を経て2013年35歳で起業。のべ400万人以上に利用されるアプリメディアを提供し、16年4月にKDDIグループmedibaにバイアウト。現在はエンジェル投資家として15社に出資し1社上場。
Facebookアカウントはこちら
Twitterアカウント「凡人エンジェル」はこちら

ビジネスパーソン大航海時代】は小原聖誉さんが多様な働き方が選択できる「大航海時代」に生きるビジネスパーソンを応援する連載コラムです。更新は原則第3水曜日。アーカイブはこちら

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus