ローカリゼーションマップ

「オンライン」の有り難みを知った一年 来年は「リアルな実感」を (3/3ページ)

安西洋之
安西洋之

 別に内省が十分にできて学びが納得のいくレベルに至ったから、外で活動する日々に戻りたいということではない。この1年、考えた多くのことを試行錯誤の実践的ステージに移したいのだ。

 言うまでもなく、あることはオンラインでもできる。しかしあることはオフラインが圧倒的に相応しく、オンラインで代用させたくない。リアルな実感を伴うプロジェクトを丁寧に仕上げていきたい。

 この数年、数々のコンセプトの言葉が徘徊している。他方、それらに対応する実質的と表現すべきか、あるいは物理的に重量のあるというか、五感に触れるものの質があまりに低下していると感じる。

 正確に言えば、五感に触れるものがないわけではない。たくさんある。ただし、コンセプトとリアルなモノやコトの間に乖離があり過ぎるのだ。殊に、今年、オンラインで言葉が先行する傾向が強まったので、そのギャップはいや応なしに顕著になった。関係図が混乱しているのだ。

 だから、抽象と具象、ヴァーチャルとリアル、両者の関係修復にエネルギーを費やしたいと思うのだ。「この言葉の表現に合っているのは、これでしょう? このモノに合っている表現は、この言葉でしょう?」というある種、安定感のある世界とはどんなものかを示すことを目指したい。

 これだけあらゆることがめちゃくちゃになったのだ。カオスがイノベーションを生む源泉であればこそ、ヴァーチャルとリアルの整理整頓それ自体がイノベーションになる。

安西洋之(あんざい・ひろゆき)
安西洋之(あんざい・ひろゆき) モバイルクルーズ株式会社代表取締役
De-Tales ltdデイレクター
ミラノと東京を拠点にビジネスプランナーとして活動。異文化理解とデザインを連携させたローカリゼーションマップ主宰。特に、2017年より「意味のイノベーション」のエヴァンゲリスト的活動を行い、ローカリゼーションと「意味のイノベーション」の結合を図っている。書籍に『「メイド・イン・イタリー」はなぜ強いのか?:世界を魅了する<意味>の戦略的デザイン』『イタリアで福島は』『世界の中小・ベンチャー企業は何を考えているのか?』『ヨーロッパの目 日本の目 文化のリアリティを読み解く』。共著に『デザインの次に来るもの』『「マルちゃん」はなぜメキシコの国民食になったのか?世界で売れる商品の異文化対応力』。監修にロベルト・ベルガンティ『突破するデザイン』。
Twitter:@anzaih
note:https://note.mu/anzaih
Instagram:@anzaih
ローカリゼーションマップとは?
異文化市場を短期間で理解すると共に、コンテクストの構築にも貢献するアプローチ。

ローカリゼーションマップ】はイタリア在住歴の長い安西洋之さんが提唱するローカリゼーションマップについて考察する連載コラムです。更新は原則金曜日(第2週は更新なし)。アーカイブはこちら。安西さんはSankeiBizで別のコラム【ミラノの創作系男子たち】も連載中です。

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus