別に内省が十分にできて学びが納得のいくレベルに至ったから、外で活動する日々に戻りたいということではない。この1年、考えた多くのことを試行錯誤の実践的ステージに移したいのだ。
言うまでもなく、あることはオンラインでもできる。しかしあることはオフラインが圧倒的に相応しく、オンラインで代用させたくない。リアルな実感を伴うプロジェクトを丁寧に仕上げていきたい。
この数年、数々のコンセプトの言葉が徘徊している。他方、それらに対応する実質的と表現すべきか、あるいは物理的に重量のあるというか、五感に触れるものの質があまりに低下していると感じる。
正確に言えば、五感に触れるものがないわけではない。たくさんある。ただし、コンセプトとリアルなモノやコトの間に乖離があり過ぎるのだ。殊に、今年、オンラインで言葉が先行する傾向が強まったので、そのギャップはいや応なしに顕著になった。関係図が混乱しているのだ。
だから、抽象と具象、ヴァーチャルとリアル、両者の関係修復にエネルギーを費やしたいと思うのだ。「この言葉の表現に合っているのは、これでしょう? このモノに合っている表現は、この言葉でしょう?」というある種、安定感のある世界とはどんなものかを示すことを目指したい。
これだけあらゆることがめちゃくちゃになったのだ。カオスがイノベーションを生む源泉であればこそ、ヴァーチャルとリアルの整理整頓それ自体がイノベーションになる。
【ローカリゼーションマップ】はイタリア在住歴の長い安西洋之さんが提唱するローカリゼーションマップについて考察する連載コラムです。更新は原則金曜日(第2週は更新なし)。アーカイブはこちら。安西さんはSankeiBizで別のコラム【ミラノの創作系男子たち】も連載中です。