ブランドの世界観と言えば、ルピシアは本社を昨年末、東京の代官山から北海道ニセコに移したことでも話題となりました。通販購入を含めて在宅勤務などで飲んでもらおうというルピシア自身の提案に、自社がリモートワークを前提に地方に移転することは非常に説得力のある取り組みだと思いました。もちろん、ニセコという外国人富裕層にも注目されるリゾートのステータス感や自然に恵まれた本質的なラグジュアリーさも、ブランドの世界観を拡げることに貢献するに違いありません。
従来で言えば、何はなくとも人の集まる各地域の目抜き通りに看板となる路面店を構えることが、ブランドのアピールとなる時代でした。でも人々の行動や意識は良くも悪くも今回の新型コロナウイルス流行を機に大きく変容もしくは従来あったムーブメントが加速させました。
消費財を提供する企業にとっても、本社所在地のあり方、リアル店舗もさることながら在宅の比重が高まった生活者とどうコミュニケーションを図るか、根本的な戦略の再構築を図る必要が生まれています。
当たり前に人が集まることが前提でなくなり、自宅で働いたり遊んだりする生活者と企業がつながっていく時代に、派手さはなくとも着々と実のある関係性を深めていくルピシアのブランディング。多くの企業にとって、示唆多き部分があるように思います。
【ブランドウォッチング】は秋月涼佑さんが話題の商品の市場背景や開発意図について専門家の視点で解説する連載コラムです。更新は原則隔週火曜日。アーカイブはこちら