ローカリゼーションマップ

何事もほどほどが良い? スウェーデンに根ざす文化「ローゴン」とは (3/3ページ)

安西洋之
安西洋之

 ある時、クルマ好きの同僚がドイツ製高級車を購入したいと思った。しかし、いきなりそのクルマで職場に乗りつければ周囲から嫉妬される。それだけでなく、近所の人が「脱税行為があるのではないか」と税務署に通報することも懸念される。

 そこで同僚はどうしたか?

 毎日、クルマのカタログをもって同僚1人1人に「これが欲しいだけど、どう思う?」と聞いて回った。それで職場の皆に「それ、いいね」と言われたら、ようやく買ったという。およそ半年を要した。

 スウェーデンの合意形成のアプローチが世界から評価されることがある。このエピソードを聞くとアプローチやメソッドが発達せざるを得ない事情があることが分かる。

 田北さんはローゴンのエッセンスを以下のようにまとめる。

「10人のうち9人がズルをしていい思いをしていたら、1人の正直者が食われてしまいます。逆に9人が正直者であれば、ズルをする残りの1人はコミュニティから叩き出されます。だから、ズルが意味なくなるようにする教育や仕組みが必要なのだと思います」

 ある国の文化を一つのキーワードで理解することはできない。「おもてなし」で日本文化がすべて分かるはずがないと、多くの日本の人は思っているはずだ。ただ、その言葉をフックにして全体像に迫る可能性を高めることはできる。

 ローゴンに対応する「ほどほどに」という表現はどこの国の言葉にもある。日本語にもある。だが、この言葉が今の日本の社会で有効に働いているか? そう問われているような気がして仕方がない。

安西洋之(あんざい・ひろゆき)
安西洋之(あんざい・ひろゆき) モバイルクルーズ株式会社代表取締役
De-Tales ltdデイレクター
ミラノと東京を拠点にビジネスプランナーとして活動。異文化理解とデザインを連携させたローカリゼーションマップ主宰。特に、2017年より「意味のイノベーション」のエヴァンゲリスト的活動を行い、ローカリゼーションと「意味のイノベーション」の結合を図っている。書籍に『「メイド・イン・イタリー」はなぜ強いのか?:世界を魅了する<意味>の戦略的デザイン』『イタリアで福島は』『世界の中小・ベンチャー企業は何を考えているのか?』『ヨーロッパの目 日本の目 文化のリアリティを読み解く』。共著に『デザインの次に来るもの』『「マルちゃん」はなぜメキシコの国民食になったのか?世界で売れる商品の異文化対応力』。監修にロベルト・ベルガンティ『突破するデザイン』。
Twitter:@anzaih
note:https://note.mu/anzaih
Instagram:@anzaih
ローカリゼーションマップとは?
異文化市場を短期間で理解すると共に、コンテクストの構築にも貢献するアプローチ。

ローカリゼーションマップ】はイタリア在住歴の長い安西洋之さんが提唱するローカリゼーションマップについて考察する連載コラムです。更新は原則金曜日(第2週は更新なし)。アーカイブはこちら。安西さんはSankeiBizで別のコラム【ミラノの創作系男子たち】も連載中です。

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus