「社会統合」という考え方がある。
どこかの国に外国人として長い年数にわたり住むにあたり、社会に積極的に馴染む意思のない人は滞在許可証を獲得しづらい。国によるが、公用語や歴史の試験に合格しないと社会統合の対象に入れてもらえない。
難民としていや応なしに移住したら、その国のコミュニティから疎外されないよう、その国の文化を学ぶように政府や自治体から「お誘い」がくる。
しかしながら、生まれた国で教育を受け、そのまま生活している場合、社会統合をあまり意識しない。独り暮らしの人に町内の回覧板が届きにくいなど数々の問題はあるだろう。高齢者のためのパソコン教室に行くか行かないかもあるだろう。このようなエピソードはメディアの話題にものる。
だが、30-40代の現役バリバリの人たちの「学びへの無気力」は、職業人生として低評価をうけこそすれ、コミュニティへの統合という評価で実にグレーゾーンだ。即ち、傍目に見えにくい。子育てのシーンでは登場するが、地域全体としてどうなのか。
冒頭に紹介した若い子が批判したのは高齢者の学びの問題だ。しかし、中年になるに従い体力的にも精神的にもさまざまな限界を感じ始める世代の(疲弊する前の)学びへの気力が実は勝負どころではないか。
このレイヤーの気力がコミュニティを動かす力になるので、彼ら/彼女らがやる気になる環境こそが鍵だと思う。
【ローカリゼーションマップ】はイタリア在住歴の長い安西洋之さんが提唱するローカリゼーションマップについて考察する連載コラムです。更新は原則金曜日(第2週は更新なし)。アーカイブはこちら。安西さんはSankeiBizで別のコラム【ミラノの創作系男子たち】も連載中です。