社長を目指す方程式

仕事で“ゾーンに入る”方法とは? 成果を上げる没頭力の高め方 (2/2ページ)

井上和幸
井上和幸

 「フロー」に入るためにできること

 さて、では一体、どのようにすればフロー状態に入れるのでしょう?

 体験的には、試行錯誤しながら頑張っていると、ある時期から色々な物事がうまく絡み合い始め、気がついたらフローに入っていた…というものですが、フロー・リサーチ・コレクティヴ社の創設者で『超人の秘密:エクストリームスポーツとフロー体験』(早川書房)著者のスティーヴン・コトラー氏は、フローの段階を次の4つに定義しています。

「苦闘」:模索段階。計画的なトレーニング、大規模な研究、徹底的なブレストなどを行なっている段階で、この時点ではフローとは逆の壁を感じていたり暗中模索の状況にある。

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「解放」:頭を休ませる段階。苦闘で燃え尽きないためにも重要な段階。歩く、しっかり呼吸するなど緊張をほぐすためにするもの。

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「フロー」:「超人(スーパーマン)体験」段階。絶対的なパフォーマンスを発揮でき、しかもそれがほとんど自然に起きているように感じられる。

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「回復」:フローの興奮が収まりつつある段階。フロー段階で成し遂げたことを統合する時期で、気の抜けたような感じになることも多い。

 このような段階を繰り返しながら、「超人」は困難に挑戦し続け、数々の偉業をなしていくのだとコトラー氏は解説しています。

 上司の皆さんも、ビジネス界においてそうありたいですよね!

 このようなプロセスを踏まえ、フローに入るためのセットアップとしては、「注意散漫の原因をシャットアウトする」「充分な時間を確保する」「好きなことをする」「明確な目標を持つ」「ハードルを少しだけ高くする」とよいそうです。

 逆に撃退すべきは、「注意散漫を齎すもの」「ストレス」「失敗への恐れ」「自信の欠如」だと。コロナ禍からの出口戦略を意識し始めるこの時期、ぜひ環境整備をしてみてはいかがでしょうか。

 チクセントミハイ博士は次のようなことを語っています。

「創造的な人々はさまざまな面で互いに異なっているが、ある一点において一致した意見を持っている。それは自分の仕事に強い愛情を持っているということである。彼らを突き動かしているものは、名声欲や金銭欲ではなく、楽しみを得ることのできる仕事の機会そのものである。」

(ミハイ・チクセントミハイ 著『クリエイティヴィティ』)

 仕事の報酬は仕事。楽しめる、のめりこめる目の前の仕事そのものがフローを呼び、「小さなことを積み重ねることが、とんでもないところへ行くただ一つの道」(イチロー)なのです。イチローも、恐らくは現役時代を通じて数えきれないフローの中にいた人でしょうね。

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 あなたはいつ、どのような時にフローに入ったことがあるでしょう? その時、何をしていましたか? 何度か経験したフローでの共通項は何でしょう? どうやったらその時に戻れそうでしょうか?

 これらの問いを常に意識し思い返してみることも、次のフローを呼び寄せるのに効果的だそうです。

 自分をフローに入れられる状態を創り出すこと、望むべくは自分が率いるチーム全体がフローに入ることができれば、それは自ずと最強軍団となるのです。

▼“社長を目指す方程式”さらに詳しい答えはこちらから

井上和幸(いのうえ・かずゆき)
井上和幸(いのうえ・かずゆき) 株式会社経営者JP代表取締役社長・CEO
1966年群馬県生まれ。早稲田大学卒業後、株式会社リクルート入社。人材コンサルティング会社に転職後、株式会社リクルート・エックス(現・リクルートエグゼクティブエージェント)のマネージングディレクターを経て、2010年に株式会社 経営者JPを設立。企業の経営人材採用支援・転職支援、経営組織コンサルティング、経営人材育成プログラムを提供。著書に『ずるいマネジメント 頑張らなくても、すごい成果がついてくる!』(SBクリエイティブ)、『社長になる人の条件』(日本実業出版社)、『ビジネスモデル×仕事術』(共著、日本実業出版社)、『5年後も会社から求められる人、捨てられる人』(遊タイム出版)、『「社長のヘッドハンター」が教える成功法則』(サンマーク出版)など。
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【社長を目指す方程式】は井上和幸さんがトップへとキャリアアップしていくために必要な仕事術を伝授する連載コラムです。更新は原則隔週月曜日。アーカイブはこちら

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