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スニーカーでもOK…カジュアルなミラノの葬儀に思う「これでいい」 (1/3ページ)

安西洋之
安西洋之

 教会での葬式に参列した。近所に住む親しかった80代後半の婦人の葬儀だ。2月に自宅で倒れ1か月は意識が戻らず、その後、意識朦朧の状態で入院していたのだが、先週、あの世に逝ってしまった。ロックダウンが解け、少なくても人が集まって葬式ができるタイミングで良かった。参列した人たちの背中をみてそう思った。 

 ミラノの葬式は実にカジュアルだ。色のついたシャツにジーンズ、スニーカーでまったく問題ない。喪主がネクタイをしていないだけでなくスーツを着ていないこともある。スーツであっても黒ではない。

 もう20年以上前になるが、日本で葬式に出る可能性があるからとミラノの店で黒いスーツを探したとき、店員に次のように言われた。

 「葬式で黒いスーツを着る習慣は、ミラノではとっくになくなったから黒いスーツは扱っていない」 

 先週、教会に出かける前に「ジャケットくらい着ていこうか」とぼくが奥さんに相談すると、「こんな暑い日のジャケットは浮くかもしれないから、シャツだけでいいと思うわ」と言われたが、そういうものなのである(女性が黒色の服を着ていることはあるが、それでないといけないという雰囲気はない)。

 スーツで隙のない恰好をしている人たちを見かけたら、葬儀屋のスタッフだろうと判断してよいくらいだ(ただし、亡くなった方がアッパークラスに属するか現役で活躍していた場合だとスーツ率は圧倒的に高まるが、老齢の引退した方の葬儀のスーツ率は低い)。

 それなりの中流階級の人の葬式にしてこうである。香典の習慣もないからまったくの手ぶらで出かける。

 それでもかなり近しい人でも参列しないことがままある。今回もそういう例をみた。

 この数年、亡くなった女性と毎日のように会っていたお茶飲み友達の近隣の老婦人は「暑いから行かない。亡くなった彼女のことをもう考えたくもない」と言って参列しなかった。 

 それもそうだ。意識をなくした時点で「彼女は死んだ」と思い込むようにしてきたのだから。

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