社長を目指す方程式

「頼み上手・頼み下手」はココで決まる! 両者の特徴を徹底解説 (1/3ページ)

井上和幸
井上和幸

《今回の社長を目指す法則・方程式:E・トーリー・ヒギンズ「有効性欲求」》

 前回、私たちはなぜ、誰かに何かを頼むことを気まずく思うのか。人にものを頼む際に感じる気まずさや、気持ちの重たさを取り除く方法をご紹介しました(前回記事:「私たちはなぜ、誰かに何かを頼むことを気まずく思うのか?」)。そのうえで今回は、相手にどのように頼むのが効果的なのかについて深掘りしてみたいと思います。頼み上手な人の「良い頼み方」と、お願い下手な人の「ダメな頼み方」を比較してみましょう。

これがデキる人の「良い頼み方」だ!

 そもそも、人が助けを求められたとき「渋々手を貸す」あるいは「まったく助けようとしない」場合とはどのようなときなのか。逆に、どういうときに「親身になって助けよう」と思えるのでしょうか。

 そのカギは<助けなければならない>と<助けたい>の違いにあります。言い換えれば、強いられるか、自発的・自己選択的にやるかの違いともいえます。人は誰しも、強要されたりコントロールされたりするのが嫌で、自ら取り組めることが好きな生き物です。ここがすべてのポイントとなりますので、まずは覚えていただければと思います。

 良い頼み方は、相手の「内発的動機」に働きかけるかたちを取ります。内発的動機とは、自分の内面に沸き起こった興味・関心や意欲に動機づけられている状態を指します。要するに、自発的に助けたいと思うような状況をつくる頼み方をするのです。

 面白い心理学の実験結果があります。それは、無報酬で一所懸命にやっていたことに、報酬を支払うようになるとモチベーションがダウンしてしまうというものです。有名なところでは、学生たちに休憩時間に知恵の輪を解かせると無心に解き続けたのに、1つ解けるごとに何ドルという報酬を出すことにしたところ、最初は一所懸命にやるものの、徐々にそれが苦痛に感じるようになってしまい、最終的に止めてしまうという結果になったのです。

 一見、報酬を支払うことは良い動機付けになると思われますが、こと善意を前提とするお願いにおいては、報酬を出すことは逆効果なのです。なぜなら、報酬を支払うと、受け取る側はそれにより相手にコントロールされていると感じるからです。

 コントロールされていると感じさせるものは、報酬だけではありません。期限やプレッシャー、あるいは脅迫なども同じ効果をもたらします。これらによって私たちは、その依頼について自分の意思で自由に行動していると感じにくくなるのです。

 良い頼み方は、「返報性」も折り込みます。返報性とは、人の心理の中で善意を尽くされたらお返しをしなければならないと思う心理のこと。私たちは、誰かに良いことをしてもらうと、その相手に「感謝の気持ち」と「義理や借りの感覚」の2つの心理が起きます。

 スタンフォード大学ビジネススクールのフランク・フリン教授は、返報性には「個人的」「関係的」「集団的」の3つがあると言います。

1.個人的返報性

 個別的にバーターが成立するような返報性を指します。「助けてもらったので、お返しに助ける」はこれに該当します。

2.関係的返報性

 家族や恋人、友人など親密な関係にある相手の間に生じるものです。明確な貸し借りが発生していなくても、「何かあったときは助けてもらえるはずだ」という前提にあります。

3.集団的返報性

 内集団での一般的な助け合いを指します。同じ会社・出身校・出身地・国籍の人たちには、仲間だという意識から、無条件に助けようという気持ちがはたらきます。

 こうした返報性が織り込まれた依頼について、人は「ぜひ助けたい!」という心理が強くはたらきます。特に<仲間を助ける>気持ちは読者の皆さんも理屈抜きに想像できる、自然と湧き上がってくる感情かと思います。

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus