話の肖像画

    出井伸之(3)中学時代、小澤征爾さんと奏でた音楽

    高校の学園祭に呼ばれて、みんなでいろんな場所に演奏をしに行ったのは楽しい思い出です。小澤さんのお兄さんが通っていた高校にも行きました。よく小澤さんのお母さんがお弁当を作ってくれましたね。小澤さんが卒業するまでの1年間は、こんな生活が続きました。

    成城学園中学時代の音楽部の先輩、小澤征爾さん(左)と=平成28年ごろ
    成城学園中学時代の音楽部の先輩、小澤征爾さん(左)と=平成28年ごろ


    《小澤さんはボストン交響楽団の音楽監督を務めるなど、指揮者として成功を収める。交友は続き、2人は仕事面でも縁がつながっていく》


    ソニーでCDよりも音質が優れた「スーパーオーディオCD」を作ったとき、ボストン交響楽団のメンバーに聴いてもらいました。「これはCDの短所を全部取り除いた音だ」という小澤さんの言葉で、僕は自信を深めることができました。新製品発表会は東京・青山のブルーノート東京で開いて、ワインも用意しました。「これは趣味の世界に向けた音ですよ」ということを示したわけです。ユニークな発表会でしたね。

    ソニーの社長に就任した平成7(1995)年夏、アメリカのタングルウッド音楽祭に小澤さんを訪ねていきました。小澤さんはすごく喜んで、テントの中で「後輩がソニーの社長になった」と仲間に英語で紹介してくれました。

    考えてみれば、僕はソニーという国際的な企業で国際人になったわけです。一方、小澤さんはスクーター1台でヨーロッパを回り、指揮者コンクールで優勝を重ねて有名になっていった。個人の力で国際人になったというところをとても尊敬しています。

    小澤さんは若い音楽家を育てることに熱心に取り組まれています。日本だけでなく、スイスにも香港にも、世界中に小澤さんの弟子がいる。素晴らしいことです。僕も今、ベンチャー企業を育てる仕事をしています。小澤さんは僕の一生にさまざまな影響を与えてくれました。(聞き手 米沢文)


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